国政報告

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民法の一部を改正する法律案について ※参考人質疑

第196回国会 2018年6月7日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

参考人の皆様には、貴重なお話をお伺いすることができ、大変感謝を申し上げます。

私の方からも幾つか質問をさせていただきます。

まず、坂東参考人に御質問いたします。

対政府質疑といいますか、それから前回の参考人質疑でも伺いましたが、今、日本では、消費者が事業者に比べて非常に弱い立場にあり、被害の救済を得にくい状況にあると思います。それは、消費者が事業者に比べて情報量や交渉力において不利であり、因果関係を立証しにくいということもあるわけですが、根本的な原因としては、欧米に比べて、日本では積極的に自らの権利、そしてそれを主張し利益を確保するといういわゆる自立性を伸ばす教育が根付いていないため、泣き寝入りしやすいという国民性というか、そのような特性があるのではないか。

そういう環境の下で、本来行政が積極的に関与して消費者を保護していかなければならないところですが、逆に、成年年齢を引き下げて、十八、十九歳の若年者に対する保護を失わせるというのは、更なる被害者を増やすこととなるのではないかと、これまで繰り返し指摘をしてまいりました。

政府は、社会の扉を開くと大変ポジティブにおっしゃっていますが、財政的な裏付けも十分な周知もないなど、懸念を払拭するだけの根拠は示されておりません。これでは逆に犯罪被害への扉を開いてしまうことになりかねないと、大変懸念をしております。そのことについて、坂東参考人の御見解をお伺いします。

参考人(坂東俊矢君)

先生から御指摘いただいたことに私も同感をいたします。

つい先週ですか、私、アメリカの消費者法をどう教えるかという学会に四日間ほど行ってまいりました。その学会でアメリカの先生方がおっしゃっていたことは何かというと、いやね、消費者法を教えるということは二つだよと、一つはあなたにどんな権利があるかということを教えることだ、二つ目はその権利をどう使ったら具体化できるのかということを教えることだと。もちろん、アメリカという国は、我が国と違ってやや個人が権利を主張しなければ社会が成り立たないという場であるのも事実ではありますが、しかし、その権利を教えるということの意味は、あなたにはこんなカタログの権利があるよだけでは駄目ですよねと。したがって、社会人向けの消費者教育の現場では、具体的な問題を出して、弁護士が一緒に相談に乗りながら、それを実現するためにはどんな証拠が必要で、どういうところに相談に行って援助をしてもらったらいいのかというところまで教育するんだということをおっしゃって、ああなるほどな、権利を教えるというのはそういうことなんだなというのを感じて帰ってきたばかりでございます。

一方、日本で、これはもう三年ぐらい前でしょうか、インターナショナルスクールで、アメリカの消費者の権利に関する映画をある先生がお作りになって、それをみんなで学生さんたちと一緒に見た経験がございます。そのとき学生さんが何言ったか。インターナショナルスクールの学生ですから、海外経験のある大変優秀な、そういう子たちですけれども、その子たちがこの映画を見て、消費者の権利というのがいかに社会にとって大切だということはよく分かった。ただ、もし自分が被害に遭ったときに、そうしたら、どこまで言っていいの、声をどうやって上げたらいいの。例えば、一歩間違ったら何か社会から声のでかい変なやつだと見られるよね。先生、要するに、権利を教えるだけじゃなくて、どういうやり方をしたらいいか教えてくださいと私に言われて、私は、弁護士しているくせにううんとうなって、それは難しい問題だねというふうに答えてしまった恥ずかしい経験がございます。

つまり、私たちはまだ、その権利というものをどう行使していくかということについて、それこそ高校や中学できちんと習っていませんし、裏を返すと、ちゃんと自分の権利を主張するためにはどんな準備をしなきゃいけないかというところも知りません。それをきちんと教えるという仕組みを機能させていくことによって、実は今議論しているような、先生方が御議論しているようなことが実現に向かって動き出すのではないかなと考えております。

糸数慶子君

ありがとうございました。

そういう意味では、本当に時間を掛けて教育をする、そして、今おっしゃったように、その権利、与えられた権利をどう使うか、これは日本の教育の中で欠けているところではないかというふうに実感いたします。

それでは、竹下参考人にお伺いをいたします。

まず、成年年齢の引下げは、養育費支払期間の終期を繰り上げ、大学等の学費の分担を限定するということでしたが、そもそも養育費については、十分な金額が確保される仕組みは今整っているのでしょうか。

参考人(竹下博將君)

結論から申し上げますと、金額は低いという御指摘もあったとおり、まず仕組みとしては整っていません。

具体的に申し上げますと、養育費については、理念上生活保持義務ということで、非監護親の生活水準と同程度の生活水準を子供に確保するということになってはいるんですけれども、また、民法は七百六十六条一項改正されまして、子の監護に関する費用については、要する費用については、分担について子の利益を最も優先して考慮するということになってはいるんですけれども、実務では先ほど来申し上げている算定表というのが使われていまして、じゃ、その算定表の中ではどのように子供を取り扱っているかといいますと、大小問題様々あるんですけれども、簡単に言えば、算定表の中では、子供については住居費は一切与えないということになっております。したがって、子供が何人いるか、あるいは子供が何歳かといったことは一切算定表の中では住居費については考慮されないということになっています。無関心なのですね。

裁判官であった方も、子供に住居費が必要なのかと、私は子供部屋などで必要だとは思ったりするんですけれども、というようなことをおっしゃっていて、実は子供について非常に冷たい現場があるんですね。

そうしますと、養育費というのは収入に応じて決まるものですから、例えば一人親家庭で、一人親の方が例えば病気などのために収入がないということになりますと、もちろん収入がないわけですから住居費も捻出しようがないんですが、子供の住居費はそもそも考えないことになっていますので、そうすると、養育費が幾ら与えられても子供は住居費がないので、これはもう低額に決まっているんですね。したがって、仕組み上格差が必ず生じるようになっていますので、このような仕組みを変えない限りは養育費が十分に確保されることにはならないのではないかというふうに私は思っています。

糸数慶子君

では、養育費は、事情の変更があれば、金額を増減したり、それから終期を変動したりするということでしたが、実務においては子供の成長に伴う養育費の変動はどのように取り扱われるのでしょうか。

参考人(竹下博將君)

先ほども少しお話ししてきたところではあるんですけれども、事情に変更があると、再婚したとか進学したとか病気になったとか、様々な事情に変更があった場合には、もう一度話し合って、金額についてあるいは支払時期について決め直しましょうという制度にはなっております。

ただ、話合いができない場合には、調停なり審判なり家庭裁判所を利用するということになるわけですけれども、そうはいっても、まず、事情が変更あったよということを非監護親に伝えないと、そもそも知らないわけですから、知らない者に義務を課すというのはかなり厳しいところではあるので、実は知らせないとそういった養育費の変動というのは起こらないんですね。したがって、逡巡している間に養育費は変動しませんから、ずっとそのままになってしまうと。

そして、先ほど来、養育費については、未就学児の段階で決めてもそのままずっと金額は同じでやっていますというようなお話をしたかと思うんですが、これは、先ほどもお話ししましたが、結局、改めて調停やりましょうということになるとコストが掛かります、弁護士費用が掛かります。ただ、実際には得られるところはそんなに養育費では多くないので、弁護士報酬の負担は大きい、手間は掛かります。調停になれば、一月に一回弱ぐらいの頻度で毎回二、三時間、二時間強ぐらいですかね、拘束されて、そういったような負担をしなければならない。そして、エネルギーの負担は多大なものでして、相手の意見をいろいろと聞かされるというのはかなり苦痛であることが多いようですので、そうすると、なかなか実際には、事情の変更があっても養育費の変更というのは難しいのかなというふうに思っています。

糸数慶子君

ありがとうございました。

それでは、ちょっと時間がありますので、前回政府の方にも伺ったわけですけれど、この改正案、これは実際には、先ほども話がありましたけれども、この民法の成年年齢の引下げの施行方法に関する意見募集、パブリックコメント、その結果では、消費者教育など、それから消費者保護施策の効果が生じること、そして成年年齢が引き下がることを社会全体に浸透させるためには相当長期の周知期間が必要であるということなんですが、三年より長い周知期間、それから、具体的には周知期間は五年程度とすべきとの意見もあり、周知期間は五年より長い期間とすべきというふうな意見もあるわけですけど、これまでも出てまいりましたが、消費者委員会成年年齢引下げ対応検討ワーキング・グループなどから、先ほどのこのパブリックコメントでは、少なくとも五年間は周知期間を設定すべきという意見が多く寄せられているというふうになっておりますけれど、そのことに関しまして坂東先生に改めてお伺いいたします。坂東参考人に伺います。

参考人(坂東俊矢君)

周知期間を一定の期間置かなければいけない、もし今回決めるのであればというのは全く同感であります。

ただ、周知期間の中で何をするのかというのがとても大きな問題かと思います。具体的な課題、今日のお話でも出てまいりましたが、それをどう解決していくのかという、何といいましょうか、道のり表といいましょうか、そういったものが見える形で提示されることが不可欠かなと思います。

大変失礼な言い方になるかもしれないけれども、これ、河上先生も二日前におっしゃっていたような気がしますが、消費者契約法は附帯決議で見直しを五年以内にやるというものが明示されていました。しかし、消費者契約法の見直しが実際に開始されたのは施行から十年以上たってからになりました。そういった形にもし民法でなってしまうと、それはとても残念なことだなと思います。

ということは、裏を返せば、その具体的な施行に至るまでの間のプログラムをどうやって見える形で提起し、具体化していくかというところまで踏み込んで議論をしていただけると大変有り難いなと思います。

糸数慶子君

時間が参りましたので終わりたいと思います。ありがとうございました。