国政報告

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選択的夫婦別姓、セクハラ問題、配偶者間の性暴力について

第196回国会 2018年5月24日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

私は、これまで本委員会で、婚姻や家族の在り方に対する国民の意識が多様化していること、法律で夫婦同姓と規定する国が日本以外に見当たらないこと、国連機関から度々是正勧告を受けていること、結婚する若い世代の方が不便や不利益を被っていること、選択制なのでより多くの国民のニーズに応えることなどを示した上で法改正の必要性を訴えてきました。しかし、上川大臣は、世論の動向、大方の意見、社会的コンセンサス等を挙げ、否定的に答弁をされています。もちろん、これらの答弁は納得できるものではないことを再三申し上げているところであります。

五月十五日の本委員会で、家族の在り方に関わる問題が個人の尊厳より重要かとの私の質問に対し、上川大臣は、これを否定した上で、「平成二十七年十二月の最高裁判決におきまして、現行の夫婦同氏を定める民法第七百五十条の規定は憲法に違反しないという判断が示されておりまして、法務省といたしましても同様の理解をしているところでございます。」と答弁をされました。これでは議論が先に進みません。

日本政府が出した女性差別撤廃委員会の最終見解に対するコメントでは、二〇一五年十二月十六日の最高裁判決においては、夫婦同氏を定める民法第七百五十条の規定において、合憲との判断が示されたものの、同判決においては、制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断される事柄との指摘もなされていると述べていらっしゃいます。判決を引いて国会で答弁されるのであれば、少なくともこのことにも言及すべきだと思います。

議論を停滞させる上川大臣のこの答弁に強く抗議し、法務省に伺います。

昨年十二月五日の本委員会で、選択的夫婦別姓について、インターネットだけの周知では理解も議論も深まらない、周知方法を検討する必要があるのではないかとの質問に対しまして、小野瀬民事局長は、国民的な議論が深まることが重要であると認識しておりまして、周知の在り方につきましても工夫の余地があるかどうか検討してまいりたいと答弁をされました。

その後、どのような工夫がなされたのでしょうか、お伺いいたします。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

昨年十二月五日の本委員会におきまして、委員御指摘の答弁を私の方からいたしました。その答弁にもございます、答弁いたしましたとおり、法務省としましても、選択的夫婦別氏制度について国民的な議論が深まることが重要であると認識しております。そのような観点から、法務省においては、ホームページに「選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について」という項目を設けて、制度の概要や氏に関する歴史的な経緯、法制審議会の答申の内容などについて周知を行っているところでございます。

昨年のその答弁の後でございますけれども、平成二十九年の十二月に内閣府が実施しました家族の法制に関する世論調査の結果が本年二月に公表されております。そういったことから、現在、その世論調査においてされております制度導入についての賛否の結果のほか、性別や年齢別による分析結果等をこの法務省のホームページに公表することを検討しているところでございます。

糸数慶子君

世論や社会的コンセンサスを理由に挙げておきながら議論が進むことに消極的と誤解されないよう、しっかり対応していただきたいというふうに思います。

次に、セクシュアルハラスメントについて伺います。

女性記者に対する福田淳一前財務事務次官のセクシュアルハラスメントをめぐって、麻生財務大臣が、本人が否定している以上断定できない、はめられたのではないかという意見もある、セクハラ罪という罪はないと矮小化した上、女性をおとしめる発言をしました。抗議を受けて麻生大臣は謝罪されましたが、セクハラ罪はないという発言は撤回されていません。政府も、五月十八日、質問主意書に対し、現行法令においてセクハラ罪という罪は存在しないとする答弁書を閣議決定しています。

刑法にセクハラ罪という罪名はありませんが、悪質なセクハラ行為は刑法上の強制わいせつ罪などに当たる可能性があります。一連の発言や答弁書は、セクハラの違法性を国内法の中できちんと位置付け、明文化することの必要性を示したとも言えます。

そこでお伺いいたしますが、セクハラの規定については、男女雇用機会均等法が事業主に対してセクハラの防止及び事後対応の措置を義務付けている規定、人事院規則が省庁について同様の義務を定めている規定及び職員はセクハラをしないように注意するという注意義務の規定があるというふうに承知しております。法務省管轄の規定はあるのでしょうか、法務省にお伺いいたします。

政府参考人(名執雅子君)

セクシュアルハラスメントに該当し得る行為には様々なものが考えられますため、これについて規定する法令について一概にお答えすることは困難でございますが、セクシュアルハラスメントという言葉を用い、これを直接禁じた法律はないと承知しております。

糸数慶子君

本当に残念でございます。これだけの規定があるにもかかわらず、そういう御答弁でございました。

次に、女性差別撤廃委員会は女性に対する暴力をテーマとした一般的勧告十九でセクハラをどのように取り上げているのでしょうか、お答えください。

政府参考人(渡邉清君)

内閣府男女共同参画局でございます。

国連女子差別撤廃委員会による一般勧告十九号、女性に対する暴力というのがございます。こちらにおきまして、女子差別撤廃条約の第十一条に関するコメントとして、第十七パラグラフにおきまして、女性が、職場におけるセクシュアルハラスメントのようなジェンダー特有の暴力を受けた場合、雇用における平等は著しく害される。また、第十八パラグラフにおきまして、セクシュアルハラスメントは、身体の接触及び接近、性的意味合いを持った発言、ポルノの表示及び性的要求といった歓迎されない性的行動を含む。かかる行為は、屈辱的であり得、安全衛生の問題となる可能性がある。かかる行為に異議を唱えることが、採用又は昇進を含む雇用関係において不利益となると当該女性が信じる合理的理由がある場合、若しくは、敵対する労働環境を創出する場合には、かかる行為は差別となるとコメントをされております。

また、勧告として、第二十四パラグラフの十項目め、アルファベットのjにおきまして、締約国は、報告に、セクシュアルハラスメントについての情報、並びにセクシュアルハラスメント及び職場におけるその他の形態の暴力又は強制から女性を保護するための措置についての情報を含めるべきであるとされています。

また、同パラグラフの二十項目め、アルファベットのtにおきまして、締約国は、ジェンダーに基づく暴力に対して、女性に効果的な保護を与えるために必要な全ての立法及びその他の措置をとるべきであるとした上で、このとるべき措置の一つとして、とりわけ、家庭における暴力及び虐待、職場における性的暴行及びセクシュアルハラスメントを含むあらゆる形態の暴力から、女性を保護するための刑事的制裁、民事的救済及び補償の付与を含む効果的な立法措置というものを挙げて、それぞれ勧告をしているところでございます。

糸数慶子君

では、女性差別撤廃委員会の日本政府審査の最終見解ではどのように勧告されているか、お示しいただきたいと思います。

政府参考人(渡邉清君)

国連女子差別撤廃委員会の日本の第七回及び第八回合同定期報告に関する最終見解、こちらにおきましては、第三十五パラグラフのアルファベット三番目、cにおきまして、職場でのセクシュアルハラスメントを防止するため、禁止規定と適切な制裁措置を盛り込んだ法整備を行うこと、及び妊娠や母親であることを理由とした差別を含む雇用差別の事例において女性の司法制度へのアクセスを確保することとされています。

また、同パラグラフのアルファベット四番目、dにおきまして、セクシュアルハラスメントに対する労働法及び行動基準の遵守を目的とした労働査察を定期的に行うこと、これらを日本政府に対して要請をされております。

糸数慶子君

日本政府に対して国連はこのように要請をしているということになるわけですが、では、日本には、何がセクハラに当たるかを明確に定義した上でこれを禁止するという法律上の明文の禁止規定もありません。被害者が訴えるとすれば民法の不法行為という一般規定くらいしかなく、二次被害を恐れ、泣き寝入りが多いという状況にあるわけですが、今回のセクハラ問題を契機に、セクシュアルハラスメントは女性の人権を否定する人権侵害であるため、法整備に向けた真剣なその御議論を始めていくべきだと思いますが、上川大臣の御見解をお伺いいたします。

国務大臣(上川陽子君)

女性と男性が自らの個性を発揮して生き生きと充実した生活を送ることができる社会を実現するためには職場における環境整備が重要でありまして、いわゆるマタニティーハラスメントなどの妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの問題やセクシュアルハラスメント、そのほか、働く女性の心身の健康を害する様々な問題につきましては、女性の人権に関する重大な問題であると認識をしております。

法務省といたしましては、女性に関する問題を含むあらゆる人権に関する相談にしっかりと応じ、人権侵害による被害申告を受けた場合に丁寧な調査を行うとともに、国民の皆様に向けて女性の人権問題に関する人権啓発活動を行うなどの取組を行っております。まずは、先ほど申し上げた認識の下で、被害を受けた方の心情に寄り添いつつ、これらの取組に力を入れてまいりたいと考えております。

昨年度でございますが、セクシュアルハラスメントを始めといたしまして、職場における各種の人権問題、これを取り上げました啓発冊子でございますが、「企業と人権 職場からつくる人権尊重社会」、こうしたパンフレットを作りまして、そして九万八千部を作成し、本年三月に全国に配布をしたところでございます。また、この内容につきまして映像化をした啓発ビデオ、これを作成してインターネット上で公開をしたところでございます。

今後、これらを活用した職場研修、こうした職場研修などの場におきまして、この啓発啓蒙活動、これについて徹底して実施してまいりたいというふうに考えております。

糸数慶子君

ありがとうございます。

民法の質問とは違いまして、ただいまの質問に対する大臣の女性に寄り添うそういう前向きの御答弁、ありがとうございます。

次に、配偶者間の性暴力について伺います。

五月二十一日の朝日新聞に、資料として皆様にも差し上げておりますけれども、夫が妻の飲食物に睡眠薬を入れ、わいせつ行為をしたり裸の写真を撮影したりということが婚姻関係の破綻と判断され、夫に慰謝料を命じたという事件が記事となっています。

配偶者間や恋人間での性暴力はなかなか事件化されず、妻が夫を告訴するケースは極めて少ないと言われています。それは、子供などへの影響を恐れるためと言われております。しかし、潜在的な被害は少なくありません。

そこでお伺いいたしますが、配偶者間の強姦は強制性交罪で対応できると言う方もいらっしゃいますが、起訴や有罪件数はあるのでしょうか、お伺いいたします。

政府参考人(辻裕教君)

ただいまのお尋ねでございますが、刑法の文言上、配偶者間において強姦あるいは強制性交等罪が成立しないということを示すような規定はございませんし、それを否定するような判例もないと承知しておりまして、一般的には、配偶者間においても強制性交等罪が成立するものというのが一般的な解釈であるというふうに承知しております。

お尋ねの起訴件数、有罪件数ということでございますけれども、当局におきましては、配偶者間における強制性交等罪あるいはその改正前の強姦罪のそれらの件数について網羅的には把握していないところではございますけれども、現実に起訴例はあると承知してございますし、当然、それを受けて有罪となった例もあるというふうに承知してございます。

糸数慶子君

御答弁にもありましたけれども、まだまだ配偶者間に性交に応じる義務があるというその誤解の下、暴力におびえながら意に沿わない性交を強いられているケースもあるわけですね。ですから、配偶者間強制性交を独立した犯罪類型とすれば、そうした誤解を解消することに資するのではないかというふうに思います。

そこで、上川大臣にもお伺いしたいと思いますが、立法での解決をすべき時期だというふうに思いますが、御見解をお伺いいたします。

委員長(石川博崇君)

時間ですので、簡潔にお願いします。

国務大臣(上川陽子君)

配偶者間におきましても、暴行、脅迫を用いた性交が許されないということは当然であると認識をしております。配偶者間においても強制性交罪等が成立するところでございます。それを明示する規定を置くことにつきましては、むしろ配偶者以外の親密な関係におきましては強制性交等罪が成立しないかのような誤解を招きかねず、かえって問題が生じ得ると考えられたことから、今般の改正ではそのような規定は置かれなかったところでございます。

刑法一部改正法附則第九条では、国会審議の過程における様々な御指摘をも考慮し、広く性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方に関する検討が求められていることから、まずは性犯罪被害の実情や、改正後の規定の運用状況の把握等を着実に進めることが重要であると認識をしております。

他方、社会一般におきましては、配偶者間では強制性交等罪が成立しないという誤解があるとすれば被害が潜在化してしまうという問題が生ずることにもなりかねないということでございますので、そのような誤解が生じないよう、関係府省とも連携をしつつ、広報啓発活動を推進しているところでございます。

糸数慶子君

ありがとうございました。これで終わります。