国政報告

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商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案について

第196回国会 2018年5月17日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風、糸数慶子です。

商法は明治三十二年に制定された古い法律ですが、制定から百二十年が経過し、今回初めて運送・海商関係の規定が改正されることとなりました。

まず、全体的な質問を最初に申し上げたいということで通告をしておりましたが、これまでも何度かありましたので、この件は既にもう答弁がございましたから、二番目の国際海上運送についてお伺いをしたいと思います。

まず、国際海上運送について、これは国内法としては国際海上物品運送法が制定されていますが、この分野について我が国は国際条約を批准しているのでしょうか、伺います。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

我が国は、この国際海上物品運送法の基となりました国際条約であります船荷証券統一条約、いわゆるヘーグ・ヴィスビー・ルールズの締約国でございます。

糸数慶子君

我が国が批准しているヘーグ・ヴィスビー・ルールズのほかに、国際海上運送についてはロッテルダム・ルールズという新しい条約もあると伺っておりますが、このロッテルダム・ルールズの主な内容、ヘーグ・ヴィスビー・ルールズとの相違点、現在までにこの条約を批准している国が何か国あるのか、伺います。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

委員御指摘のロッテルダム・ルールズでございますが、二〇〇八年に成立したものでございます。このロッテルダム・ルールズの主な内容でございますけれども、まず、その条約の適用対象でございますが、ヘーグ・ヴィスビー・ルールズとは異なりまして、船荷証券が発行された場合だけではなくて、海上運送契約が締結された場合の法律関係を包括的に定めております。また、海上運送に関する法律関係だけではなく、複合運送を含めまして、全部又は一部が海上運送である場合の法律関係も定めております。

次に、この条約の特徴的な規律といたしましては、運送人は発航の当時だけではなくて航海の期間中も堪航能力担保義務を負うこと、また、航海上の過失免責を認める規定、つまり、船員の航行又は船舶の取扱いに関する行為によって生じた損害が免責されるという、こういう規定が存しないこと、また、荷送り人は、危険物に関する通知義務に違反したときは、過失がなくても通知の懈怠に起因する損害の賠償責任を負うとされていることなどがございますけれども、ヘーグ・ヴィスビー・ルールズと比較いたしますと、運送人の義務及び責任のほか、荷送り人の義務及び責任をより詳細に定めている点などで大きく異なっております。

このロッテルダム・ルールズでございますけれども、現在の加盟国は四か国にとどまっておりまして、いまだ発効の見通しは立っていないと、こういう状況でございます。

糸数慶子君

現在まで我が国がこのロッテルダム・ルールズを批准していない理由は何でしょうか。また、現在、ロッテルダム・ルールズの批准を検討しているのか、そして今後の批准の可能性についてもお伺いしたいと思います。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

このロッテルダム・ルールズの発効には二十か国の加盟が必要でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、まだ四か国の加盟にとどまっておりまして、主要海運国は加盟しておりません。また、関係業界からこの条約の加盟に向けた要望もされていないという状況でございます。そのため、我が国はこの条約を批准していないというものでございます。

このような状況から、現時点でこの条約の批准の見込みについて申し上げることは困難でございますが、引き続き主要海運国や関係業界の動向等を注視しつつ、必要に応じて関係省庁とともに十分な検討をしてまいりたいと考えております。

糸数慶子君

次に、運送営業の定義についてお伺いしたいと思います。

今回、陸上運送、海上運送及び航空運送の定義規定が設けられました。陸上運送は改正前にも定義されていましたが、今回の改正によって、今まで陸上運送の規定が適用されていた湖川、港湾における運送は対象から外れます。

このような改正をしたその趣旨は何でしょうか、お伺いいたします。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

現行の商法の下では、陸上又は湖川、港湾における運送については陸上運送に関する規定の適用がありまして、海上運送に関する規定の適用がありますのは、商行為を目的とする航海の用に供する船舶による運送とされております。

これに対しまして、改正法案では、御指摘のとおり、湖川、港湾その他の平水区域における運送を陸上運送の対象から外して海上運送の対象に含めることとしております。この理由でございますけれども、湖川、港湾その他の平水区域における運送を陸上運送と評価することは社会通念上も相当ではないと考えられますこと、また、船舶安全法が平水区域を航行する船舶に対しましても堪航能力担保義務を課していること、こういったことなどを理由とするものでございます。

糸数慶子君

今回の改正で設けられた海上運送の定義には、第六百八十四条に規定する船舶のほか、第七百四十七条に規定する非航海船による物品又は旅客の運送も含まれています。そして、第七百四十七条に規定する非航海船は、専ら湖川、港湾その他の海以外の水域において航行の用に供する船舶とされています。

海上輸送といっても、海以外の水域における運送も含まれるわけですから、むしろ水上運送と言った方が正確なのではないかと思いますが、これに対する御見解を伺います。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

改正法案におきましては、運送営業に関する総則規定といたしまして、陸上運送、海上運送、航空運送等の定義規定を置いておりますけれども、専ら湖川、港湾その他の海以外の水域において航行の用に供する船舶である非航海船による物品又は旅客の運送についても海上運送というふうにしております。

委員御指摘のとおり、非航海船による運送も含まれるにもかかわらず海上運送とすることには違和感があるのではないかと、こういう御指摘だとは存じます。

しかしながら、改正法案におきます海上運送に関する規定といたしましては、この運送営業の規定のほかに、海商の部分の海上物品運送に関する特則の規定も存するところでございます。こういった海上運送を含めた海事に関する特別な私法上の規律であります海商法の分野は、体系的にまとまった法領域として発達してきたという特殊な沿革がございます。そういったこともありまして、海上物品運送に関する特則の規定は、航海船による運送の特殊性に着目して規定がされております。そのため、この海上物品運送に関する特則におきましては、非航海船による運送には、この航海船に関する規定の一部を準用するという形になっているものでございます。

このように、商法におけます海上運送に関する規定は主として航海船による運送を念頭に置いたものであると。こういうことからしますと、改正法案の下でも、海上運送という文言、これ現行の文言を維持するということには合理性があるものというふうに考えております。

糸数慶子君

荷送り人の危険物に関する通知義務について伺います。

危険物に関しては、衆議院でも多くの質問がされました。改正案の危険物の定義は、引火性、爆発性その他の危険性を有するものとなっていますが、これでは余りに抽象的であり、具体的に何が危険物に該当するのかがよく分からないと思います。

もう少し具体的に規定できなかったのか、また具体的にはどういうものが危険物に該当するのか、お伺いいたします。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

この改正法におきましては、危険物につきましては、現行の国際海上物品運送法の規定と同様に、引火性、爆発性その他の危険性を有する物品と定義しております。

このように、危険物の定義を抽象的なものといたしましたのは、技術革新等によりまして、将来新たに危険物として把握されるべきものが生ずることが容易に想定されるため、これらの危険物にも対応する必要があること等を踏まえたものでございます。

この引火性、爆発性その他の危険性を有するものでございますが、現行の国際海上物品運送法の解釈と同様に物理的に危険な運送品を指すものでございまして、具体的には、例えば、ガソリン、灯油、火薬類、高圧ガス、アルコール濃度の高い化粧品などがこれに該当するものでございます。

糸数慶子君

このような抽象的な規定で、一般国民にとって、何が危険物に当たるか必ずしもはっきりしないと思います。一般国民が荷送り人である場合にも、このような通知義務を課すのは非常に厳しいと思うのですが、これに対する御見解を伺います。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

この商法上の危険物の該当性につきましては、公法的な規制もございまして、例えば、消防法ですとか危険物船舶運送及び貯蔵規則等々の公法的な規制もありますが、そういったものも参考にして判断することができます。また、特に、新たに製造された化学薬品等につきましては、元々安全確保の観点から、そういった危険性の有無が慎重に判断されるべきものというふうに考えられます。

一般国民が危険物の荷送り人となるケースにも様々なものがあると考えられますが、一般論としては、荷送り人は運送人よりもそのものの危険性を知り得る地位にあることから、まずはできる限り注意を払って通知義務を果たしていただくことが原則となります。

その上で、改正法案では、危険物通知義務に違反したことによる荷送り人の責任は債務不履行に関する民法の規律に従うというふうに整理しておりまして、荷送り人は自己に、自分に帰責事由がないことを主張、立証したときは、債務不履行による損害賠償責任を負わないこととなっております。そして、荷送り人が危険物についての詳しい知識を有していない一般国民の方である場合には、そのような事情もこの帰責事由の有無に関する判断において考慮される事情となるものと考えております。

このようなことからしますと、改正法案は、一般国民にとって酷に過ぎる結果とはならないように配慮しているものというふうに言えようかと思います。

糸数慶子君

荷送り人が危険物についての詳しい知識を有していない消費者である場合、そのことが帰責事由の判断において考慮される事情となり得るとのことでありますが、消費者は、自分が一般消費者であることを主張すれば、危険物について詳しくなく、したがって帰責事由がないとされるということでしょうか。帰責事由となり得るというだけでは、一般消費者であっても帰責事由があると判断されることもあり得るわけで、予測可能性が大変低いと言わざるを得ません。この場合の荷送り人の主張、立証責任について、より詳しい答弁を求めます。

政府参考人(小野瀬厚君)

先ほど申し上げましたとおり、荷送り人が危険物についての詳しい知識を有していない一般消費者である場合には、帰責事由の有無の判断において荷送り人に有利に働く事情になるものと考えられますが、荷送り人が自分が一般消費者であるということを主張すれば、直ちに帰責事由がないというふうに判断されるということでもございません。

先ほど申し上げましたとおり、一般消費者が危険物の荷送り人となるケースにも様々なものがあると考えられますが、一般論としては、荷送り人の方はできる限り注意を払って通知義務を果たしていただくことが原則となります。そして、その帰責事由の有無につきましては、荷送り人が一般消費者であって、例えば危険物に詳しい専門業者等と同等の知識を有していることを求めるのは酷な場合があるということを前提といたしまして、具体的な危険物の性状、一般消費者の方がこの危険物に関する情報にアクセスする機会の有無、アクセスの容易性、こういった個別の事情に照らして、社会通念上一般消費者としてできる限り注意を払ったと、こういうことが主張、立証される場合には帰責事由がないと判断されるものと考えられます。

糸数慶子君

次に、高価品について質問いたします。

高価品の特則について、現在の第五百七十八条が改正されて第五百七十七条第一項となりますが、この条文中の「その他の高価品」とは具体的にどのようなものがあるのでしょうか、伺います。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

この高価品につきましては、判例によりますと、容積又は重量に比して著しく高価な物品をいうものとされておりまして、具体的には、商法上例示されております貨幣、有価証券のほか、宝石、貴金属、骨とう品などがこれに当たるというものでございます。

糸数慶子君

改正案の第五百七十七条第二項第一号によりますと、物品運送契約の締結の当時、運送人が運送品が高価品であることを知っていた場合は、運送人が責任を負わないとする同条第一項の適用がないとのことです。

それでは、もし契約締結後に運送人が高価品であることを知った場合、運送人の責任はどうなるのでしょうか、伺います。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

改正法案の下では、高価品の滅失、損傷又は延着につきましては、運送人は、荷送り人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知したとき、物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき、運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたときを除き、損害賠償の責任を負わないこととされます。

したがいまして、御指摘のように、契約締結後に運送人が高価品であることを知ったというような事案でございますれば、運送人は、故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着を生じさせた場合は損害賠償を負うこととなりますが、それ以外は損害賠償の責任を負わないということになります。

糸数慶子君

改正案の第五百七十七条第一項によりますと、荷送り人が高価品の運送を委託するに当たってその種類及び価額を通知しなければ、当該高価品が滅失、損傷又は延着しても、荷送り人は運送人に対して損害賠償を請求できないと規定されています。そして、改正後の第五百八十七条では、この第五百七十七条が準用されていますので、荷送り人は不法行為責任も問えないこととなります。

このような高価品の場合、運送を委託するに当たってその種類及び価額を通知しなければ、当該高価品が滅失、損傷又は延着しても、荷送り人は運送人に対して契約上も不法行為に基づくものも全く責任を問えないことになります。通知した場合は高価品の価額について損害賠償請求ができます。通知の有無によってこれだけの差があることは適切であるとお考えでしょうか。

政府参考人(小野瀬厚君)

お答えいたします。

高価品につきましては、盗難等の危険が高く損害も巨額に上るために、運送人としては、委託された運送品が高価品であることを知れば、その取扱いに特別の注意を払うと考えられますし、それに見合う割増し運送賃を請求することができます。しかしながら、運送品が高価品と知らずに運送を引き受けた場合には、高価品にふさわしい取扱いをするきっかけがないにもかかわらず、損害が生ずると多額の損害賠償責任を負わせることとなって運送人にとって酷になります。高価品の特則は、これらの点を考慮して設けられたものでございます。

このような特則の趣旨からしますれば、高価品とそれ以外の運送品について、この規律、大きな差異があるといたしましても合理的な理由があるというふうに考えられます。

また、改正法案では、運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じた場合には高価品の特則を適用しないこととなっております。したがいまして、この具体的なケースにおいて、重過失の認定などを通じて適切な解決が図られるものと考えられます。

糸数慶子君

ほかにも通告をしておりましたが、時間が来ましたので終わりたいと思います。

ありがとうございました。