国政報告

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部落差別解消推進法案、大阪府警機動隊員による「土人」発言 ※参考人質疑

第192回国会 2016年12月6日 法務委員会

糸数慶子君

沖縄の風の糸数慶子と申します。よろしくお願いいたします。

本日は、参考人の皆様におかれましては、お忙しい中御出席をいただきまして、また貴重な御意見をいただきまして、心よりお礼を申し上げたいと思います。

実は、私の方も四人の参考人の皆様に、今回のこの法案の評価について、それぞれ参考人の皆様、特に懸念であるとか、それからこの法案の改善点あるいは問題点などありましたら御意見をお聞かせいただきたいと思いましたが、今、高木委員の中からも大分御質問ありました。

それで、今答弁されたこと以外にどうしてもこれだけはという強調する点がありましたら、それぞれ参考人の方々にお伺いしたいと思います。

参考人(西島藤彦君)

先ほど言ったとおりでありますし、本当に、さきの国会から継続して審議をいただきまして、我々とすれば、何とかこの国会で皆さんの御努力で成立をお願いしたいという思いでいっぱいであります。

先ほどからいろんな事例も出していますように、それぞれの本音の内面に内面に探っていけばいくほど、まだまだ差別意識という存在に我々ぶち当たるわけであります。中には、寝た子を起こすなになるんではないかとか、しかし、先ほど私、事例言いましたように、寝た子を起こさないで、いきなりがんと差別で起こされる事例だってあるわけでありますから、だから、やっぱりそういう事実は事実でお互いに共有をしながら、それとやっぱり向かい合える、そのことを許さない国民の広がり、こういうものを我々も不断の努力でこれは頑張っていかなければならないわけでありますし、そういうものを求めているところであります。

したがって、今回のこの法案、我々とすれば、何とかその目的にあることを法制化することによって、我々も一国民としてそこに依拠しながら不断の努力を図っていく、そして差別のない社会をつくっていく、こういう思いで頑張っていく所存でありますので、一日も早いひとつ成立をよろしくお願いいたします。

参考人(灘本昌久君)

大体先ほど来申し上げているとおりなんですけれども、この法律自体は、結局、相談とか調査とかいうことを、最初は理念的なことが書いてありますけど、結局その理念に基づいてどういうことをするんだといえば、相談体制を充実させるとか調査をするというようなことだと思うんですね。ですから、そんなに何か事新しく今までと違う事業がどかんと起こってくるようなことじゃないと思うので、私としては、先ほど言いました、ちょっと同和問題がどちらかといえばもう忘れられたふうになっている中で、少しそれに対する研修の機会が若干増えるという効果がある程度かなというふうに思っております。

と言うと、何か余り期待していないようなことになってしまいますが、できましたら、この法案とは別に、今、日本社会が、何といいますか、両極分解というか、生活困難層はますます苦しくなっているようなところもありますので、そういう地域を下支えするような、地域を最後のところで受け止めて崩壊しないようにするような、そういう施策もまた同時に検討していただけたらと私は思います。

以上です。

参考人(新井直樹君)

一つは、ヘイトスピーチ根絶法との関係です。

私も、ああいう特定の地域に押しかけていって、そこに平穏に暮らしている人を出ていけとやるような、そういう諸言動は何らか規制は必要だなとは思っていました。

その際に、この委員会の議論をずっと聞いていまして、いわゆる表現の自由を侵さない形でそういう諸言動をどうやったら排除できるかというところを一生懸命議論されて、ある意味では分かりにくいような差別的言動の規定がなされて、濫用できないような形できっちり作られていると思います。ただ、やはり表現行為に関わる規制ですから、ちょっと半分は懸念するところもあるんですけれども、踏み込み過ぎていない形で作ろうとすると、もうやっぱりあれがぎりぎりなのかなと思ったんですね。

今回のこの法律で、部落差別とか、部落差別は許されないと、ずっと二十か所ぐらい文言があるんですけど、部落差別とは何か、許されないというその対象となる事柄は何かというのが全然書いていないんですよね。だから、法律としてどうなんだというところと、それから、基本に戻れば、部落差別というのは法律上規定することはやっぱり困難じゃないのか、困難だから書けなかったんじゃないのかと。そうすると、書けなかったんならばこの法律は作らない方がいいんじゃないのかという考えになっていくんです。

つまり、同じ差別的言動という形で発議者の方には部落出身者に対する差別というのが言われるんだけれども、部落そのものが変わってきちゃっていて、そこでの出身者というのも、どこまでを出身者というふうに社会的に見れるかというのも非常に変わってきちゃっていて、特定の地域の例えば沖縄に住んでいる人というのとはまた異なる中身なんですね。

だから、差別の根っこは同じってこの前先生言われたけれども、やっぱり差別の属性が異なっていて、それを法律でなくす、許されないといったときに、やっぱり厳密にやらないと、言論、表現の自由に抵触し、それを侵すことになりかねないという危惧があるんです。

だから、作ってほしくないんです、こういう無限定なものは。とりわけ、差別の根っこが同じで、なくそうというんであれば、違った形の教育の在り方、啓発の在り方をもっと議論すべきだと、そのそれぞれの領域でですね、法務委員会じゃなくてそれぞれの領域で議論すべきだというふうに僕は思います。

参考人(石川元也君)

関連して申し上げますけれど、私は、理念法だからというんですが、理念はもう確立しているというのが私たちの見解、考えです。だから、これが、法律作らなくても、部落差別ということは許されないという社会の通念はなっておる。だから、今の法律、この法律は作らなくても、今までのもので最高裁判所の判決が出たり、あるいは差止めの横浜の地裁のものが出たりしています。

私が紹介しました基本判例でも、例えば埼玉県の市長選挙が選挙無効になった事件があります。同和対策是か否かということについて、それを差別だとして解放同盟と、それから選挙管理委員会がそのポスターに紙を貼ったというような事件がある。そのときに、裁判所は、差別が許されないということは憲法十四条をまつまでもなく当然そのことは違法なことなんだと、許されない。許されない行為について、どういうのがあればどういうふうに法律的に適用して対応していくかという、そういうことは今でもできるわけです。

問題は、そういう社会意識も確立し、社会理念としても確立しているけれど、これを作らなければどうしても駄目なんだという、そういうふうには私は思えない。むしろ、作った場合の弊害が、今までも御指摘しているようなことがありますし、それは、人権全てについての確立した救済機関というものをする方がよっぽど先なんだ。その中に、部落問題でも極端なあるいはひどいものについては当然その中で救済される。問題は、部落問題だけ特別の法律を作るという考え方が、この三十三年間の行政を通じて、そういうことはもう二度としないというふうになったはずじゃないか。そういうことを申し上げたいと思います。

糸数慶子君

ありがとうございました。

差別がなくなるために、やはりいい法律を作ることはもちろんなんですが、それはやっぱり使う人に人権感覚がなければ差別はなくならないというふうに思います。

そこで、時間ももう残り少なくなっておりますけれども、人権の専門家でいらっしゃる参考人の皆さんに土人発言についてお伺いをしたいと思います。

お分かりだと思いますが、これは、沖縄県の東村高江でヘリパッド建設に反対する市民に対して機動隊員が土人と罵倒したことは、私、沖縄県民の一人として許し難い差別発言だと思いますが、土人とは未開の土着人を指すわけでして、この言葉は、単独でも人に対して使えば言われた方は差別的だというふうに受け取ります。

機動隊員は、土人発言の直前に、触るな、どこつかんどんじゃ、ぼけという侮蔑的な発言を行っておりますが、この一連の発言を政府は差別と断定できないというふうにしておりますけど、この差別的言動を行った側が差別に当たらないと主張しても、言われた側が差別であると受け止めればそれは差別に当たると思うわけですけど、参考人の皆さんに一言ずつ、これが差別発言であったかどうかということを御見解を伺いたいと思います。

参考人(西島藤彦君)

その発言の出た後、我々組織としては代表して抗議の行動を起こしました。かつて法律の中にも、アイヌの人たちを、旧土人保護法という名称で法律もかつてありましたし、そういう意味では、そういうアイヌ新法の運動にも我々も参加をしながら取り組んできましたし、今言う件についてはすぐさま私たち組織としては抗議の行動を起こしたということだけ理解してください。

参考人(灘本昌久君)

この間の警察官による発言は、もう明らかに差別的な意味を込めて言っているので差別発言だとは思いますが、土人という言葉がいついかなる場合でも差別に当たるかどうかというのはこれはまた別の話で、アイヌに関する旧土人保護法の土人というのも、実は昔、先住民というような意味合いとかなり近い状態で使っている時代もありましたので、今土人という言葉が差別的だから、ずっと歴史的に遡って、どんな場面で出てきても土人という言葉はこれは使った人が差別を込めて言ったに違いないと類推することはちょっとできないかなと。

この間の警察官の発言はもう明らかに問題発言と思いますが、それをしかし政府が差別であるかないかというのを決定して言うということがいいかどうかというのもまたちょっと、少なくとも大変な問題発言であるということさえ認めれば、差別であるという規定をしたかしないかは余り重要なことではないんじゃないかと私は思っております。

参考人(新井直樹君)

言われた側がそう受け止めたから差別かという立て方だけでなく、やはり言った、土人やシナ発言もありましたけど、やっぱり侮蔑、排斥、見下す、そういう意図が感じられる、そういう流れの中での発言だと思いますから、これは明白に差別的言辞だと思います。

ただ、それを認めない担当大臣というのは何なのかと。やはり、そこの方の人権教育の方が本当大変大切だと、そっちの方を教育していただきたいと思います。

参考人(石川元也君)

私は、もう明白な差別発言だと思います。同時に、今もありましたが、言われた側の感覚が、同時にそれが社会的支持を受けている。昔の、踏まれた者しか分からないというのとは違って、言われたのがひどいということを全国の人たちが皆そう支持しています。私たちの団体、自由法曹団もあれには抗議をしています。

問題は、政府の要職にある人がそういうことを認めない、その方のなりというか、その職にふさわしくないですね、それはもう。そういうことだと思います。やはり、重要な職にあり、部下といいますか、それを監督する立場にあるんですから、はっきりそのことを認めて部内での処理をきちっとする。大阪府警だけの処分になっていますけど、これは全国の警察官の問題だろうと思いますから、おっしゃるとおり、あのことは極めて不当なことだと思います。

糸数慶子君

ありがとうございました。終わります。