国政報告

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代執行訴訟における政府の和解案受け入れ、日米地位協定の環境補足協定

第190回国会 2016年3月10日 外交防衛委員会

糸数慶子君

無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。

まず、質問に入る前に、女性差別撤廃条約の日本政府報告審査について一言申し上げたいと思います。国連女性差別撤廃委員会第六十三会期が二月十五日から三月四日までスイスのジュネーブで開催されました。日本政府の審査は二月十六日に行われ、私も傍聴し、審査に先立って行われましたNGOの主催したブリーフィングでは、沖縄の基地と女性への性暴力についてお話をさせていただきました。

今回、政府代表を務めたのは外務省の杉山審議官ですが、全ての女性が輝く社会を目指し、女性の活躍を推進する安倍政権で政務三役のどなたも出席されなかったことは極めて残念です。女性の活躍推進には積極的でも、女性差別の撤廃には消極的との印象を与えかねません。杉山審議官は、審査において、慰安婦問題の強制性について極めて政治的な発言をされました。審議官に批判が集中していますが、政治的な発言とそれに対する回答はやはり役人には限界があり、政務三役あるいは与党議員が行うべきだったというふうに思います。杉山審議官の発言は、安倍総理が昨年七月に受け入れた自民党の日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会からの提言が大きく影響していると思います。

提言では、慰安婦問題をめぐる吉田証言を虚偽と指摘し、国際機関などの広報活動の強化策を求めています。申入れを行った稲田朋美政調会長から、強制連行、性奴隷二十万人などと言われていることについて政府が反論するよう求められたというふうに承知しています。戦時下の女性への性暴力は世界のあらゆる地域で行われていますが、慰安婦問題がこれほど広く知れ渡り、国内外でのこの問題に関する決議へと広がったのは、やはりこれを否定する活動があったからとも言えます。

例えば、二〇〇七年六月十四日付けのワシントン・ポスト紙における慰安婦強制連行の証拠はないとする意見広告です。それに賛同する人がいたかもしれませんが、批判の声が瞬く間に世界に広がりました。最近では、昨年七月、NATOに派遣された自衛官がウエブサイトに書いたクマラスワミ氏の人柄について好意的な記述を削除したことです。クマラスワミ氏は一九九六年に慰安婦を性奴隷と指摘する国連報告書をまとめたことで知られているため、自民党議員が国防部会でこれを問題視し、削除を求めていました。しかし、ウエブサイトでは報告書の内容には全く触れておらず、日本政府の立場も否定していませんでした。むしろ、過剰に反応したこと、そして削除したことに国内外で批判の声が上がりました。

今回の杉山審議官の発言を評価する方々には慰安婦の存在そのものを否定する方もいらっしゃいます。そのお一人である元議員は、審査の傍聴もされていましたが、二〇一四年五月九日の衆議院内閣委員会では、女性差別撤廃条約の政府報告について、アジア女性基金などを通じて謝罪や賠償は終わっているという答弁では通用しないところに来ている、慰安婦はなかったと踏み込んだ答弁をしないと根本的な解決にはならないと驚くような主張をされています。杉山審議官の発言はそういった方々の発言の延長線上にあるため、これまでの政府の取組、特に河野談話を踏襲する政府の立場まで否定するかのような印象を与えてしまったということを強く指摘しておきたいと思います。それでは、質問に入ります。

一点目でありますが、代執行訴訟における和解案受入れとその是正指示について伺います。辺野古埋立承認取消しをめぐる代執行訴訟で国と県の和解が成立しました。埋立工事が中断し、多くの沖縄県民は安堵していましたが、裁判所の指示した協議も始まらないうちに政府は翁長知事の辺野古埋立承認取消処分の是正を指示しました。不誠実極まりない対応だと思います。和解し協議を行うということは、お互いの意見を聞くということではないでしょうか。和解案を受け入れると発表しながら、安倍総理は辺野古が唯一の選択肢であるという国の考え方に変わりはないと既に発言しています。政府として、今回の協議にどのような姿勢で臨まれるつもりですか、防衛大臣にお伺いいたします。

国務大臣(中谷元君)

政府といたしまして、やはり普天間飛行場の抱える危険性、また住民の皆様方の心配を一日も早く除去していくということにつきましては、これは沖縄県と政府の共通の認識でございますけれども、残念ながらいまだにこの問題が決着せず、しかも訴訟合戦という状況の中で、このまま進めばこの問題が膠着をいたしまして、普天間基地が固定化をされかねないというようなことがございましたので、今回、裁判所が提示をいたしました和解で合意をいたしたことでございます。

この和解につきましては、和解条項が示されまして今後の和解を進めるプロセスが明記をされているわけでございますが、この和解条項の三項に、国交大臣が沖縄県知事に対して埋立承認取消しに対する国の是正措置をするとありまして、これはあくまでも沖縄県も合意をした和解条項で示された手続を行ったものでございます。

この和解条項にはその後の手続も書かれておりまして、この是正指示をした後、一週間以内に、不服のある場合は沖縄県は国地方係争処理委員会に審査を申出をする、またその後、審査を通じまして出された結論については、それぞれ一週間以内に沖縄県の高等裁判所に提訴をするということまで書かれているわけでございますが、その一方で、判決確定まで円満解決に向けた協議を行うということも書いておりますので、国といたしましては、和解条項に従って、県との協議につきまして、政府として近日中に今後の進め方などにつきまして沖縄県と調整をして、速やかに実施に移していきたいと考えておりますが、いずれにしましても、和解条項に従いまして誠実に対応してまいりたいと考えております。

糸数慶子君

先ほど藤田議員からも細かく詳しく質疑ございましたけれども、やはり前回行われた集中協議、これは非常に形式的で選挙対策のパフォーマンスとしか考えられませんでした。今回の協議においても、まさに政府は沖縄県民の声を受け止め、国の安全保障という点では、これ全国民で負担し、沖縄県だけに負担を強いることがないような解決策を示していただきたいと翁長知事もずっとおっしゃっております。その点についてお答えください。

国務大臣(中谷元君)

現在、和解が進行しておりまして、これは今後、この条項に従って執り行われるということでございますので、こういったプロセスを通じて考え方も説明もし、また円満な解決に向けた協議も行っていくということで、沖縄県の皆様とは手続また協議を誠実に行っていくということにいたしたいと考えております。

糸数慶子君

誠実に沖縄県民の声を受け止めるとおっしゃる割には全く誠実に受け止めていないという手法を政府は今取っているんじゃないでしょうか。辺野古新基地建設は県民の反対がある限り不可能であるということを改めて強調させていただきたいと思います。

次に、日米地位協定の環境補足協定について伺います。日米地位協定の環境補足協定ですが、これは二〇一五年の九月に岸田外務大臣とカーター米国防長官が環境補足協定に署名をしております。政府は、環境補足協定によって情報共有、環境基準の発出、維持、立入り手続の作成、維持等を通じて米軍施設・区域内外での環境対策が強化されるというふうにしています。

ところで、本年一月以降、沖縄県企業局の調査によって、沖縄県北谷町にある浄水場や嘉手納基地周辺の河川、また普天間飛行場に隣接する公園の湧水から残留性有機汚染物質のフッ素化合物PFOSが高濃度で検出されたことが明らかになりました。特に水道水の取水源となる河川、浄水場からの検出には大変な驚きと怒りを覚えます。この件について、政府として把握していることをお示しください、中谷防衛大臣。

国務大臣(中谷元君)

防衛省といたしましては、平成二十六年二月から翌年の十一月までの間に沖縄県が実施をしました水質調査におきまして、北谷浄水場付近の河川等から比較的高濃度の有機フッ素化合物PFOSが検出されたということは承知をいたしております。

本件につきましては、本年一月の二十一日、沖縄県から沖縄防衛局に対して、PFOSの発生源は米軍嘉手納飛行場である可能性が高いといたしまして、同飛行場におけるPFOSの使用実態及び履歴の確認、使用の中止、基地内への立入り及びサンプリング採取等につきまして要請がなされたために、防衛省から米側に回答を求めたところであります。二月十七日、米側から、基地内の井戸におけるサンプル採取のために立ち入ることができること、PFOSを含む泡消火剤を有するものの、現在PFOSを含まない製品に取り替える作業を実施をしているということ、PFOSを含有する泡消火剤は業界の標準的な慣行に従って使用しているということなどについて回答がございました。防衛省といたしましては、二月二十三日、米側の回答に関する沖縄県からの再照会事項につきまして米側に回答を求め、あわせて、米側に対してはPFOSの含有可能性のある物質が漏出した場合の封じ込めの措置等の対策に一層万全を期すように要請をするとともに、PFOSを含む泡消火剤の使用の可能な限りの抑制とPFOSを含まない製品への早期の転換を求めたところでございます。

防衛省としては、引き続き、本件の早期の解明に向け、米側に対して働きかけ、今後米側から得られた情報につきましては関係者の皆様方に早期に伝達をし、必要な調整をして対応してまいりたいと考えております。

糸数慶子君

汚染源がまだ特定されておりませんが、やはり嘉手納基地の排水から高濃度が検出されていることから、嘉手納基地内に汚染源がある、その可能性が高いとされています。浄水場の汚染は深刻な環境汚染であり、住民の不安を払拭するためにも早急な原因究明が必要であります。環境補足協定第四条及び立入りに関する日米合同委員会合意に基づいて米側に立入り許可要請を行うべきだというふうに考えますが、岸田大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(岸田文雄君)

ただいまの経緯につきましては中谷大臣から説明がありました。要は、現時点においては米側に情報提供を求めている段階であり、この嘉手納飛行場におけるPFOSの漏出についてまだ確認ができていない段階であります。この段階ですので、環境補足協定に当てはめた場合、これは環境に影響を及ぼす事故、すなわち漏出が現に発生した場合と定められていますので、この環境補足協定に当てはめて立入り申請の対象と判断することは現時点では困難であると判断いたします。

その上で、一般論として申し上げれば、仮にこのPFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合、現行の合同委員会合意、これは一九九七年の合意ですが、これに基づいて、米側当局からの通報を受け、日本側は環境補足協定に基づいてサンプル調査のための立入り申請を行うことができる、こういった対応が考えられます。また、米側から通報がない場合、日本側として環境汚染を疑う場合は、日米合同委員会、一九七三年の合意があります。この合意に従って米側に調査要請や立入り許可申請等を行うこと、これは可能になると考えます。いずれにしましても、今の段階では米側に情報提供を求めている段階ですので、引き続き米側に確認をしっかり求めていきたいと考えます。

糸数慶子君

今回のこの環境汚染についてでありますが、この責任を明確化する必要がありますが、誰がどのような責任を取るのか、中谷防衛大臣にお伺いいたします。

国務大臣(中谷元君)

現在調査をいたしておりまして、沖縄の防衛局におきましては、これに対して文書を出して検出状況について開示をいたしております。このPFOSが検出されたということで、因果関係についても問合せをいたしておりまして、現時点で本件の責任の所在について申し上げることは困難でございますが、早期解明に向けまして米側に働きかけをいたしておりますので、米側からの情報、内容を踏まえまして、必要に応じて関係者とも調整しつつ対応してまいりたいと考えております。

糸数慶子君

立入りに関するこの日米合同委員会合意によりますと、環境補足協定第四条に基づく環境事故、立入りが認められるためには、先ほど岸田大臣からもありましたが、米側から日本側への環境事故発生の通報が必要とされています。しかし、これでは米側が汚染源であることを認めた場合にしか日本側は立ち入れないことになるわけです。

しかし、今回の水質汚染のように、米軍に起因するおそれの極めて高い深刻な環境汚染が現に発生している場合であっても、米側の通報がない限り日本側は立入りの申請すらできないというのでは、環境対策の強化にはつながらないのではないでしょうか。通報がなくても、米軍に起因するおそれのある環境事故が現に発生している、その状況であれば、日本側が立入りをすることができるようにすべきではないですか。改めて岸田外務大臣の御所見を伺います。

国務大臣(岸田文雄君)

先ほども申し上げましたが、環境補足協定に基づく環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合の立入り申請については、米側からの情報提供が端緒となっております。ただし、米側から通報がない場合であっても、既存の日米合同委員会合意、一九七三年の合意に従って考えた場合に、日本側として環境汚染を疑う場合には米側に調査要請や立入り許可申請等を行うことは可能であると考えます。

ただ、今、現状につきましては、先ほど来説明がありますように、米側に情報提供を求めている段階ですので、まずはこの情報提供をしっかり求めていく、米側に確認を求めていく、これに努力をするべきであると考えます。

糸数慶子君

では、今、米側に調べていただいている、その結果は、いつ頃これは公表できるんでしょうか。

政府参考人(中島明彦君)

先ほど来大臣からも申し上げておりますように、米側には事実関係について問い合わせておりますけれども、現時点で米側の方からめどについて示されているということはございませんので、ちょっとこの場で申し上げることは困難でございます。

糸数慶子君

この浄水場の汚染もそうですけれども、沖縄県内では基地周辺、基地跡地における環境汚染の問題が深刻化しております。更に申し上げたいのは、この事後処理にも問題があるということです。

例えば、高濃度のダイオキシン類を含むドラム缶が発見された沖縄市のサッカー場の汚染土を覆っていたブルーシートが台風で剥がされたことがあります。私も何度も現場に足を運びましたが、そこを視察した専門家がダイオキシン発見後の管理のずさんさにも非常に驚いておりました。研究室でも厳重に扱われる物質を風雨にさらしたまま、二次汚染対策もきちんと行われなかった、そのこともあるわけですが、これについて御所見をお伺いいたします。

国務大臣(中谷元君)

昨年の七月に台風九号が沖縄県に来襲した影響によりましてブルーシートが一部剥がれましたが、ブルーシートは速やかに張り直したところでございます。また、この試料採取を行いまして排出調査を行いました結果、周辺環境への影響につきましては確認をされませんでした。防衛省としまして、今後も沖縄市等と調整を行いながら、適切に廃棄物混じりの土砂等を管理した上で、事後速やかに土砂等の処分を実施する予定でございます。

糸数慶子君

今、防衛省の調査とそれから沖縄市の調査、そして専門家の調査をいろいろ聞いてみますと、国やそれから市の対応についても多くの疑問がございます。

なぜこの環境汚染の問題が次々出てくるのか。これは、やはり米軍にきちんと責任を負わせていないからではないですか。米軍による環境汚染が発生したとしても、米軍にその原状の回復義務がないという、これは日米地位協定に問題があると思わざるを得ません。今回の環境補足協定は不十分だと言わざるを得ませんが、常識的に考えて、例えば土地を借りている場合に、その土地を返すときに原状回復をするのは当然、土地を借りた人の義務だと思います。なぜ米軍には原状回復義務がないのか、御説明をお願いいたします。

国務大臣(岸田文雄君)

現状の日米地位協定におきましては、これは第四条に明記されていますが、施設・区域の日本への返還に当たり米側に原状回復の義務がない、その代わりに日本側においても残される建物、工作物等について米側に補償する義務を負わない、こういった形で双方の権利義務のバランスを取っているという構図になっております。

環境補足協定におきましても、こうした日米地位協定の構造はあえて変えておりません。この返還地において原状回復のための措置が必要であれば、これまで同様、日本政府が責任を持って行う、こうしたことになると考えます。

糸数慶子君

では、諸外国ではどうなんでしょうか。ドイツや韓国、そして米軍のその他の外国軍隊による環境汚染が認められた場合に米軍等はどのような義務を負っているのか、また、基地を提供している国や自治体にはどのような権利があるのか、お示しいただきたいと思います。

政府参考人(森健良君)

お答えいたします。米国と他の国との間の地位協定につきましては、政府として必要な範囲で情報収集を行っておりまして、例えば米国とドイツや韓国との間でも、協定あるいは関連の合意議事録などにおきまして、駐留軍の派遣国が環境保全の重要性を認識し確認する旨規定するなど、環境分野についての一定の規定はあると承知しております。一方、それぞれの法律関係は各国におきまして極めて複雑でございまして、例外規定や除外規定がありますなど一概には申し上げられないという状況だと思います。

糸数慶子君

今、細かいことはおっしゃいませんでしたけれども、この日米地位協定は諸外国の地位協定と比べて、私が調べた範囲でもかなり不平等です。地位協定によって日本国民の暮らしが脅かされている現状、政府としてどのように受け止められるのか、岸田大臣にお伺いします。

国務大臣(岸田文雄君)

日米地位協定と他国と米国とが結んでいる地位協定、この比較ですが、やはりこの規定ぶりだけではなくして、実際どのように運用されているか、あるいは背景がどうであるかなど、この全体像の中で検討する必要があります。この優劣を一概に論ずるというのは困難なものがあります。

その上で申し上げれば、日米地位協定、これは協定そのものに加えまして数多くの日米合意を含んだ大きな法体系です。政府としては、手当てすべき事項の性格に応じて合同委員会を通じた取組などによって不断の改善を図ってきています。刑事分野においては、これまでも様々な取組を行ってきました。直近では二〇一三年十月に米軍人等が起こした事件について米側での処分結果を被害者側にお知らせする新たな日米合意を作成したところですし、環境分野につきましては、先ほど来議論の中に出ております環境補足協定を締結をしました。

地位協定について様々な意見があること、これは承知しておりますが、引き続き個々の問題について、是非目に見える改善、これを一つ一つ具体的に積み上げていく、こうした姿勢でこの地位協定についてあるべき姿を追求し、国民の理解を得ていきたいと考えます。

糸数慶子君

この安保、それから地位協定によって日本国民の生命や財産が脅かされている現状、政府はきちんと把握すべきではないでしょうか。環境補足協定は、米軍による環境汚染の防止や早期の解決には今のやり取りを聞いても不十分な協定だと思います。環境汚染が発生した場合の日本側の立入り権限の強化、そして米軍の原状回復義務はもとより、日米地位協定、抜本的に改定すべきだということを強く申し上げ、そして先ほど代執行訴訟の和解のこともありましたけれども、本当の意味で政府が沖縄に寄り添って、そして沖縄の理解を得たいというのであれば、もっと誠実に中身のある協議をしっかりしていただきますように強く要望して、終わりたいと思います。ありがとうございました。