国政報告

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水銀条約

第189回国会 2015年5月21日 外交防衛委員会

糸数慶子君

無所属の糸数です。よろしくお願いいたします。

まず、人や環境に有害な化学物質について国際的な管理を目的とした国際条約には、これまで、バーゼル条約やロッテルダム条約など一定の有害物質を対象にした条約がありました。今回、有害金属類の中でも水銀に特化して条約が作成され、その名称も水銀に関する水俣条約として水俣の名前が掲げられたことは、我が国が経験した水俣病の教訓を忘れず、それを象徴するものとして有意義なことであるというふうに思います。

有害金属類にはほかにも鉛やカドミウムなどがある中で、今回なぜ水銀に特化した条約が作成されたのか、その経緯をお伺いいたします。

国務大臣(岸田文雄君)

まず、水銀は、一度環境に排出されると、分解することなく環境中を循環する特性を有しています。よって、産業革命以降、人為的な排出によりまして環境中の水銀濃度は増加し続けている、こういった実情があります。そして、現在でも途上国を中心として利用され、金の採掘や廃鉱山からの水銀汚染、工場跡地における残留水銀の処理等の問題が発生し続けています。

このような事情を踏まえて、平成二十一年、国連環境計画第二十五回管理理事会において本条約の作成が決定されるに至りました。我が国は、この水俣病の経験を踏まえ、水銀汚染対策の強化を進めるべきとの立場から、本条約の交渉に積極的に参加し、計五回の交渉が行われました。そして、その結果、平成二十五年十月十日、熊本において開催された外交会議において本条約が採択された次第であります。このような経緯をたどっております。

糸数慶子君

この水銀の管理の強化については、二〇〇〇年代以降、国際的な議論が進められてまいりました。その中で、当初は、水銀の輸出入、それから排出について、まず法的拘束力のある国際約束を作成しようとする考え方と、各国による自主的な取組を強化することで対応可能であるとする考え方があったというふうに聞いております。

まず、議論のその最初の段階で、米国、EU、そして中国などがこうした水銀管理の条約化についていかなる考え方を持っていたのか。その上で、我が国がどのような立ち位置を取り、どのような提案を行ったのか。水俣病の経験を持つ我が国は、この水銀の管理について最も厳しい主張を行い、法的拘束力のある国際約束を作成することを強く推進していく必要があったのではないでしょうか。

この条約作成に当たって我が国が果たしてきた役割、改めて伺います。

国務大臣(岸田文雄君)

御指摘のように、本条約の検討に当たっては、様々な考え方、立場の違いがありました。当初、米、EU、中国を含む各国は、法的拘束力のある枠組みを求める国、一方で自主規制で十分だとする国など立場の違いがありましたし、また、交渉過程では、途上国を中心に、一次採掘や水銀添加製品の製造、輸出入など多くの分野で、条約発効後の即時の規制導入について消極的な国が存在いたしました。

こうした立場の違いがありましたので、我が国としては、こうした状況を踏まえつつ、我が国でこの会議を開催すること、あるいはアジア太平洋地域のコーディネーターとしての役割を果たすなど、交渉促進に貢献してきた次第であります。条約の名称についても、水銀に関する水俣条約とすることを提案いたしましたし、また、条約の内容面におきましても、我が国等の主張に基づいて、水銀に関する健康側面について独立した規定が設けられる、様々な貢献を行った次第であります。

我が国としての取組、貢献については、以上申し上げたようなことであると認識をしております。

糸数慶子君

次に、本条約においては水銀を使った製品のリストが掲げられ、それらが製造や輸出入が禁止されておりますが、電池や蛍光ランプ、体温計などがその対象となっておりますけど、同様にそれぞれ例外も認められています。なぜ水銀を使った製品について一律に利用を禁止することができなかったのでしょうか。

また、禁止の対象となった製品は、その廃止期限について二〇二〇年までというふうにされておりますが、締約国の要請によればこれを最大十年延長することもできるとなっております。条約作成過程において利用禁止の対象として判断されたのであれば条約発効後即時に利用を禁止すべきだと考えますが、どのような事情があったのか、お伺いいたします。

政府参考人(尾池厚之君)

お答えを申し上げます。

世界的規模で実効的な水銀の規制を行うためには、本条約への途上国を含む幅広い参加を得ることがどうしても必要でございました。この観点から、条約の作成過程におきましては一定の柔軟性を持って交渉が進められたと。この結果、段階的に水銀の使用を削減するというふうな内容で合意された部分もございますし、あるいは、今委員から御指摘がありましたように、最初五年間、さらに、締約国会議の許しが得られれば更に五年間の延長を認めるというふうな形での柔軟性が設けられているところもございます。

ただ、この条約が現に規制しているものが未来永劫これしかないということではないのでございまして、この条約の中には将来的に追加的な規制を検討するための規定というものも置かれてございます。条約の目的を実現するために現実的かつ効果的な枠組みを定めるものというふうになっておりまして、将来的には規制対象が広がるということも十分考えられてございます。

糸数慶子君

加えて、我が国におきまして、電池や体温計など国民生活に身近に関わってくる製品をめぐる現状と、条約が発効した場合にはどうなるのか。例えば、虫歯の治療に使われる歯科用アマルガムについては、使用禁止ではなく、段階的に削減するための措置を締約国がとることとされておりますが、なぜ歯科用アマルガムだけこのような扱いとなったのか、併せて我が国の使用状況も伺います。

政府参考人(尾池厚之君)

歯科用アマルガムに関しまして、まず御答弁を申し上げます。

歯科用アマルガムは、歯科治療の充填剤として現在でも途上国ではかなり広く使われてございます。そのため、即時の使用禁止とすると対応が困難であるという国がございました。こういうことで、交渉過程におきまして、使用を段階的に削減する措置をとるということで合意されたところでございます。

我が国に関しまして申し上げれば、歯科用アマルガムの利用状況で、これは国内で使われている水銀の使用量約八トンのうち、この歯科用アマルガムで使われているものは二十キログラム、僅か〇・三%ということでございます。

それから、それ以外の様々な、蛍光ランプですとか体温計でございますけれども、これらのものにつきましては、二〇二一年以降の製造及び輸出入が禁止をされているということになってございます。

糸数慶子君

最後に、水俣病を経験した我が国が、水銀の恐ろしさをよく認識し、水銀を使った製品の利用を減らしていくことができたかもしれません。しかし、途上国を始めとして、暮らしの中でいまだ水銀が常態的に利用されているという現状があります。

我が国は、国際社会に向かって率先して水銀利用に対する注意喚起を行っていくべきだと思いますが、本条約を締約するに当たって、外務大臣の認識を伺って、終わりたいと思います。

国務大臣(岸田文雄君)

情報提供あるいは注意喚起について御質問をいただきましたが、水俣病の経験を有する我が国においては、他国に先駆けて水銀代替・削減技術の開発、導入が進められています。しかし、その一方で、世界においては途上国を中心に相当量の水銀が引き続き使用され水銀汚染が発生しております。こういった状況ですので、我が国が情報提供、注意喚起を率先して行う、大変大きな意義があると考えております。

これまでも、世界における水銀対策のための調査、あるいは日本が培ってきた環境技術の移転等の協力、また、水俣条約への各国の署名、締結を促進するためのサイドイベント、こうした情報提供に取り組んできましたが、是非こうした取組は今後も続けなければならないと思いますし、一層強化していきたいと考えます。

糸数慶子君

終わります。