国政報告

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検察官関与拡大は問題

第186回国会 2014年4月10日 参議院法務委員会(少年法改正 40分)

4月10日(木)、法務委員会で少年法改正案について谷垣法務大臣に質問しました。

①少年法改正については、検察官関与制度の対象事件の範囲拡大と量刑の引き上げ(有期刑上限20年)が共に問題があると指摘しました。

②沖縄の子どもの貧困についても言及し、復帰後40年余の沖縄振興策でも県民所得は低迷、失業率はワーストの現状から、沖縄の子どもたちが置かれている厳しい現状を紹介しました。

③人権条約の個人通報制度についても追及しました。

糸数慶子君

無所属の糸数です。

少年法改正について最後の質問でございますので重なるところもございますが、改めて確認の意味でお聞かせいただきたいと思います。

まず、検察官関与制度の対象事件の範囲拡大関係についてお伺いいたします。

政府は、検察官関与制度の対象事件の範囲を拡大する理由として、より適切な事実認定を挙げています。しかし、衆議院法務委員会における参考人質疑を見ますと、事実認定の重要性は共通認識ではあるものの、検察官が少年審判に関与することによって事実認定がより適切に行うことができるのか疑問視する意見も出されています。

そこでお伺いいたしますが、職権主義的審問構造にある少年審判に検察官が関与する制度は二〇〇〇年の少年法改正によって導入されたものですが、検察官が少年審判に関与することによって事実認定が適正化されるとする根拠は何でしょうか。また、成人の刑事裁判において検察官の果たすべき役割と少年審判における検察官の役割の違いについて、それぞれ谷垣法務大臣にお伺いいたします。

国務大臣(谷垣禎一君)

今、糸数委員がおっしゃいましたように、刑事裁判におきましては、当事者主義的な対審構造と。検察官と被疑者が対立して、そしてそこに裁判官が臨むという形を取って、そういう中での刑事裁判における検察官の役割は、被告人の処罰を求める訴追官あるいは原告官としての役割を担っているわけですね。これに対して少年法の場合は、あくまで家庭裁判所の裁判官が、少年審判を行う裁判所が職権主義的な役割を担って行うものでありまして、職権主義的審問構造と言われておりますが、少年審判に関与する検察官はあくまで審判協力者として家庭裁判所の手続主宰権に服しながら審判の手続に関与するという違いがございます。

検察官関与制度は、審判協力者としての検察官の立場を踏まえながら、少年側以外の公益的見地からの視点による証拠の収集、それから吟味を加えることによって、非行事実の認定上問題がある一定の事件における事実認定手続の一層の適正化を図っていこうという制度でございます。具体的には、検察官関与の決定があった場合、検察官は、その非行事実の認定に資するため必要な範囲で、事件記録及び証拠物の閲覧、謄写した上で審判手続に立ち会って、少年及び証人等に対する尋問、意見の陳述などを行うことができるとなっております。

こういう検察官の活動を通じて、検察官関与決定があった事件における事実認定手続の一層の適正化が図られるものと考えております。

糸数慶子君

関与検察官の審判廷においてのその行動が、二番目の質問ですが、刑事事件の訴追者そして原告官のように感じられたと、感じた裁判官が相当数存在するということを指摘した文献がございますが、谷垣大臣はこの指摘をどのように考えられるでしょうか。

政府参考人(林眞琴君・法務省刑事局長)

まず、今のように刑事事件の、検察官の関与がなされた審判、その主宰した裁判官において、当該検察官について刑事事件の訴追者あるいは原告官のように感じられたと、こういった意見があったという指摘、これについては、アンケート結果の中の一部にそのような記載があったということも私どもも承知しております。

もとより、この審判手続に出席する検察官というのは、あくまでも家裁、家庭裁判所の手続主宰権に服しながら、審判手続に協力する形で関与するものでありまして、もとより、刑事手続の訴追官、原告官の活動とはおのずから異なるんだと、このことが非常に重要なことでございまして、このようなことを十分に、この役割、これは限界でもあると思いますが、審判手続における検察官の限界も十分認識した上で審判手続に出席する必要があると思っております。

先ほどの指摘のアンケートについては、アンケート全体を見ますと、そういった指摘はごく少数にとどまっているものと私どもは理解しておりますけれども、いずれにしましても、今申し上げたように、この検察官関与における検察官の役割の十分な認識、そしてまたその限界も十分認識した上で審判手続に出席するべく、そのような検察官に対してのこの少年法の趣旨等の徹底に努めていく必要があると考えております。

糸数慶子君

ありがとうございました。

私が先ほど申し上げましたのは、これ実は平成十六年の改正少年法の運用に関する研究というそのレポートの中に、検察官が関与した七十二人のうち、証人尋問がなされたのは四十件、これ五五・六%と報告されています。

今回、法制審では、例えばオレオレ詐欺等で証人尋問が必要な場合に、裁判所が尋問すると少年から不信感を抱かれる危惧があることが立法事実として述べられていますが、証人尋問が必要ではないのに検察官が関与している実態があるようですので、この運用の是正について配慮されるように改めて要望したいというふうに思っています。

先ほど、谷垣大臣におかれましては、私が質問申し上げましたように、成人の刑事事件においての検察官の果たすべき役割と、それから少年審判における検察官の役割の違いについてそれぞれ丁寧に御答弁いただきましたけれども、先ほど申し上げましたように、やはり裁判所が尋問すると、少年から不信感を抱かれる、危惧される面もあるということも指摘されておりますので、この是正の運用について配慮されるように改めて要請をしたいと思います。

それから、これまで検察官関与制度が限定的に運用されてきたということは、これ裏を返せば、少年審判に関与した経験のある検察官が少なく、ノウハウの継承や、それから反省すべき点の是正が十分に行われているのかという問題をはらんでいるのではないかというふうに考えます。

この点について、谷垣法務大臣の所見をお伺いいたします。

政府参考人(林眞琴君)

委員御指摘のとおり、検察官関与決定の事件数、これまでは運用上は比較的少数にとどまっております。そうしますと、実際には多くの検察官、少年審判に関与した経験を有していないというような実態がございます。

そういったことでございますので、なお一層検察官に対しましては、少年審判手続における、先ほど来申し上げました検察官の役割と、またその限界と、また少年法の趣旨を十分に理解する、そういった上で少年審判に出席すべきであります。そのことから、今後とも、こういった刑事手続が異なる検察官関与制度の趣旨については十分に研修あるいは具体的な事件の決裁において上司からの指導というものを重ねていって、適切にこの検察官関与制度が運用できるように努めていくものと承知しております。

糸数慶子君

今御答弁ございましたけれども、検察官関与制度が是非生かされるように研修などよろしくお願いしたいと思います。

次に、少年に対する刑事処分に関する規定の見直し関係についてお伺いをしたいと思います。

平成十六年の刑法改正において、有期刑の法定刑の上限を十五年から二十年に、加重した場合の有期刑の上限を二十年から三十年にそれぞれ改めた際には、少年法の刑事処分に関する規定の見直しは行われませんでした。

そこでお伺いいたしますが、現行法の規定では適切な科刑ができない悪質な事案は平成十六年の刑法改正以前には存在せず、それ以降に生じているという認識でしょうか。それとも、事案の性質に変化はないものの、量刑の評価自体がその後変化しているという認識なのでしょうか。谷垣法務大臣の御見解を伺います。

国務大臣(谷垣禎一君)

過去の同種事例と比べて一般的に量刑が上昇しているかどうかと、これは実はなかなかぽんと言うのはちゅうちょを覚える難しいところでございまして、要するに、量刑が個別の事件における事情を踏まえて決せられるものであるわけでございますので、一概に申し上げることはなかなか難しいところがあります。

もっとも、先ほどおっしゃった平成十六年の刑法改正によりまして、成人に対する有期刑の上限が引き上げられたわけですね。そういうことから、その後、十五年を超える懲役刑が言い渡される割合は確かに増加しております。少年に対する刑についても、個別の事件における事情を踏まえて判断されているわけですから、直ちに全体的な量刑の上昇傾向があるため現行法の範囲内で適切な刑を言い渡すことができなくなったと言い切ってしまうのは難しいかなと思います。

糸数慶子君

今回の少年に対する刑事処分に関する規定の見直しは、不定期刑の長期の上限を十年から十五年に、それから短期の上限を五年から十年に引き上げることが出発点となっています。現行の少年法では、処断刑の範囲の中で不定期刑の長期及び短期を定めるとされているところ、改正案では、短期については少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し、特に必要があるときは、処断刑の短期の二分の一及び長期と短期の幅の制限を下回らない範囲内で定めることができるとされています。

このような規定を設ける理由は何でしょうか。また、具体的にどのような場面に適用されることを想定しているのか。それぞれ法務省にお伺いいたします。

政府参考人(林眞琴君)

少年に対する不定期刑は、長期についてはもとよりでございますが、短期も刑でございますので、基本的にはその処断刑の範囲内において決定されるべきものであります。

しかし、少年については、その可塑性から処断刑の下限を下回る期間で更生が可能であり、かつ、またその行為責任の観点からもそのような期間において刑の執行を終了させることが許容される事案もあり得るところでございますところ、少年に対する刑については、成人に対する刑に比して教育が重視されることから、このような事案についてまで一律にその処断刑の範囲内において短期を定めなければならないとすることは相当でないと考えます。

その場合には、それでは酌量減軽というものを施せばいいのではないかということもあり得ますが、この酌量減軽となりますと、その行為責任、酌量減軽をすることによって行為責任の程度、また責任非難まで軽くなったという誤った評価を行うことになること、また不定期刑の長期を決定するための処断刑についてまで短縮すればかえって適切な量刑をできなくなることから、これは相当でないということになります。

そこで、今回のように、そのような新たに処断刑を下回ることができるというような規定を設けなければ、長期が処断刑の下限の方に定められる場合には短期を定めることができなくなってしまうという事情がございます。したがいまして、今回、個別的な事情を考慮して処断刑の下限を下回る期間を定めることができるという規定を置く必要があるということから、五十二条第二項を設けることとしたものでございます。

そこで、どんな場合にこういった処断刑を下回る短期を定めるような事案が想定されるのかということでございますが、例えば、その少年が自己の犯行を真に反省しているか、また更生意欲があるか、改善更生のための環境がどの程度整っているかなどの事情でありますとか、あるいは処断刑の下限を下回る短期を定めることが当該少年に改善更生意欲を持たせることができるか、あるいは円滑な社会復帰に資するかどうか、そういう意味でのこの規定を適用することの効果、あるいは行為責任の観点から処断刑の下限を下回る短期を定めることが許容されるかどうか、こういったことを総合的に考慮した上で必要な場合に処断刑を下回る短期を定めることができると、このように考えております。

糸数慶子君

ありがとうございました。

次に、平成二十年改正少年法等に関する意見交換会に法務省が提出した少年に対する刑の執行状況という資料がございます。それを見ますと、昭和六十一年には不定期刑の短期が経過する前に仮釈放された割合が四一・一%でしたが、平成十三年には五・六%まで低下しております。これについて法務省の御見解を伺います。

政府参考人(齊藤雄彦君・法務省保護局長)

お答え申し上げます。

不定期刑受刑者の刑の執行率の問題だと思います。近時、年により多少変動ございますが、執行率が次第に高くなってきているというのは認められるところでございます。

どのようなものについて仮釈放が許されるかということにつきましては、刑事施設における処遇を踏まえて、通常、刑事施設の長からの申出に基づいて準司法機関である地方更生保護委員会において個別具体的に判断されるべき事項でございますので、お尋ねの点について当局として確たることを申し上げることは困難ではありますが、犯した罪が重大であることから仮釈放の申出までに相応の期間の施設内処遇を要する事案とか、それから被害者を含む社会の感情等に慎重な配慮を要する事案が少なくないことなども影響しているのではないかというふうに推測しているところでございます。

糸数慶子君

ありがとうございます。

次に、衆議院法務委員会の参考人質疑を見ておりますと、刑の執行状況が長期化している原因について、二〇〇〇年の少年法改正による影響の可能性を指摘する意見も出されていますが、政府はどのように分析しておられるのか、お伺いをいたします。以前と比べて少年の質が変化し、改善更生が困難になっているということなのでしょうか。法務省の見解をお伺いします。

政府参考人(齊藤雄彦君)

お答え申し上げます。

今御答弁申し上げましたように、必ずしも明確な理由が、明らかな理由が分かるわけではないんですが、例えば、その少年について、非常に複雑、難しい問題を抱えている少年がいて仮釈放にのせるまでの期間が長くなっているとか、それから家庭と少年とのきずながだんだん薄くなってきていると、そういったことなどもありまして、例えば、仮釈放した場合の帰住先の確保などに時間が掛かるとか、それから、近年の被害者の意向なども十分考慮してそういう仮釈放なども判断するとか、そういった種々の要因が影響しているのではないかというふうに推測しているところでございます。

糸数慶子君

今回のこの少年法改正が厳罰化であるとする新聞報道などに対して谷垣法務大臣は、衆議院法務委員会におきまして、少年に対する科刑を一律に引き上げることを目的とはしていない、また、より適切な科刑を可能とすることを目的としたものであるというふうに答弁をしていらっしゃいます。

しかし、二〇〇〇年の少年法改正以降、少年に対する刑の執行状況が長期化していることを考えていきますと、今回の刑の引上げが与える影響というのは決して軽視できるものではないというふうに思いますが、今回の改正に対する改めて法務大臣としての思いをお伺いしたいと思います。

国務大臣(谷垣禎一君)

少年法というのはもう随分長い歴史のある法律ですが、やっぱり成人と違う少年の特質に合わせてこういう法律を作って運用してきたというのは、私は守っていくべき日本の法制度の伝統の一つだと思っております。

ただ、確かに、大きな改正が例えば平成十二年にございまして、私もあのときの改正についてはよく記憶しておりますが、これは、全体の統計的な犯罪の数が、少年犯罪の傾向がどうというよりも、やはり、世間の耳目を聳動するような事件が起きますと、やはり少年法では足らないところがあるのではないかとかいろんな議論が起きてまいりますね。あのときも、前にいわゆる酒鬼薔薇聖斗事件とかそういったものがございまして、それから、幾つかどうも認定の中で必ずしも事実関係、少年の保護という点ではいろいろ考えたかもしれないけれども、事実関係の認定が不十分であったのではないかと指摘されるようなことも起きてまいりまして平成十二年の法改正になった。それで、今回でございますから、制度も少しずつ変化してきていることは事実でございます。

ただ、その中でやはり、先ほども申しましたけれども、少年、こういう言い方を私はしておりますけれども、罪にも染まりやすいけれども、罪から抜け出すことも割合、簡単と言うといけませんが、容易に、まだ人格形成途上であるのでそういうことが可能であるということに、やはり、もちろんその中に被害者の観点とかいろんな観点を入れていかなければなりませんが、そういうところに一つ視点を置いた法制度というのは、私は必要なものではないかと思っております。

糸数慶子君

ありがとうございました。

御決意を伺いまして、また次の質問に行きたいと思います。角度を変えまして、沖縄における子供の貧困についてお伺いをしたいと思います。

子どもの貧困対策の推進に関する法律が昨年の六月、第百八十三回国会で成立をいたしました。本年一月十七日に施行されて、四月四日に子ども貧困対策会議の第一回会議が開催されています。これは七月を目途に大綱策定が図られるようですが、これによって子供の貧困問題が解決に向かって動き出すことと期待をしております。

ただ、沖縄県は、他の都道府県とはちょっと異なりまして、子供の貧困問題がより深刻で、そのような状況が戦後ずっと続いております。それについてちょっと報告をしながら質問をさせていただきたいと思います。

山形大学の戸室准教授の研究によりますと、二〇〇七年度の数値ではありますが、全国の貧困率が一四・四%だった頃、沖縄県は二九・三%と、全国に比べて約二倍となっています。また、ワーキングプアの割合が二〇・五と、これ全国平均が六・七%の時代ですから三倍となっておりまして、この沖縄の貧困は構造的につくられた問題であり、これはさきの大戦で地上戦を体験した沖縄が経済的な部分でゼロから出発し、二十七年間の米国の占領、さらには復帰後も広大な土地を奪われて県民が狭隘な土地で第三次産業に従事するしかなかったというその現実の側面から来ているものだというふうに思います。

一九七二年の日本復帰から四十年を経て、今累計で約十・二兆円が沖縄振興予算として費やされましたけれども、現時点においても、県民所得、それから失業率、大卒の初任給、全てが全国ワーストであります。加えて、沖縄県においては離婚率が高く、一人親家庭の数が大変多く、全国的にも一人親家庭の貧困がかなり問題視されております。沖縄においては更に困窮した状況にあることが容易に推察されることと思いますが、この貧困問題を一刻も早く解決することが県民の悲願でありますが、なかなか厳しい現実がございます。

そこで、沖縄振興局にお尋ねしたいのですが、これまで四十年以上にわたって国の沖縄振興政策、予算が投入されて、格差の是正とそれから沖縄の自立的発展の基礎条件の整備等を目的にインフラ整備や産業振興が図られましたけれども、一人当たり県民所得については全く縮まっていません。はかばかしい成果が得られていないのが現実であります。

こうした現状についてどうお考えになるか、そしてまた、その原因がどういうことであり、今後どのような対策を取っていかれるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。

政府参考人(井上源三君・内閣府政策統括官)

お答えをいたします。

昭和四十七年の沖縄の本土復帰以来、沖縄の振興開発のための諸施策を積極的に講じてきた結果、全国との社会資本整備水準の差が縮小するとともに、県内総生産や就業者数は全国を上回る伸びとなっているところでございます。他方、一人当たりの所得につきましては、委員御指摘のとおり、全国との格差は縮小しているものの、依然として下位にとどまっているなど、課題はいまだ存在するものと承知をいたしております。

その原因でございますけれども、本土から遠隔の地にあり、市場規模が小さく、経営基盤の脆弱な中小企業が大半を占めるなど、島嶼経済の不利性があるということがございます。また、そうしたことに伴います失業率が高いこと、そして平均賃金が低いことなどが考えられるところでございます。

今後の沖縄の自立的経済の発展のためには、産業の振興、雇用の確保に積極的に取り組むことが極めて重要であると認識をいたしております。引き続き、リーディング産業でございます観光・リゾート産業、IT関連産業の発展を図っていくとともに、国際物流産業の集積、沖縄科学技術大学院大学を生かした知的・産業クラスターの形成など、各種施策を積極的、総合的に推進してまいりたいと考えているところでございます。

糸数慶子君

いろいろ政策を提案されてはおりますけれども、ただ、さきの大戦からやはり米軍統治の期間に沖縄が受けた傷、それから戦死者の多さ、それから土地が基地に奪われたという、そういう直接的なものもあります。さきに申し上げましたように、米軍統治が二十七年間にも及んだために、例えば児童福祉の面に遅れが出て、それが現在にも影響を及ぼしています。

また、多くの米軍基地が存在するという過重負担によって、本来ならば生産の場であるべき肥沃な土地、そして利便性の高い土地が奪われておりますが、ただ、今、北谷町の例えばハンビータウンなど、あるいは那覇市の新都心のように、経済が今まで阻害されておりました基地から土地が返還されて、新たな土地の利用によって関係者の所得が数十倍にも増えて、そしてそこで働いている方々も、基地があるときには数千人でしたけれども、今返還された跡地で約一万七千人にも増えたというケースがあるわけです。ですから、復帰当時一五%あった基地関連収入の割合が今やたった五%になっているという現実から考えていきますと、やはり沖縄県民のその所得の低さ、失業率の高さの一因は米軍基地の過重負担にあるというふうに私は考えております。

そこで、このような沖縄の子供たちの貧困問題、それから学力や非行問題の根源は、やはり二十七年間に及ぶ米軍占領による法整備の遅れと、それから現在の基地の過重負担の影響を受けているものが主な要因であるというふうに考えます。

今後、沖縄振興予算や一括交付金等、是非、沖縄の子供たちの貧困問題や、あるいは学力、非行問題の解決のために充ててほしいというふうに思います。例えば、公立の学童保育所や児童館、一つの地域に一つを設置する等考えていただければというふうに思いますが、これについて沖縄振興局のお考えを聞かせていただきたいと思います。

政府参考人(井上源三君)

沖縄の発展を考えます場合に、先ほど申し上げましたとおり、産業の振興、雇用の確保は極めて重要であると考えておりますけれども、他方で、委員御指摘のように、子供の貧困問題などの課題に取り組むことも極めて重要であると認識をいたしております。

そこで、平成二十四年度に改正をされました沖縄振興特別措置法に基づきまして創設された沖縄振興一括交付金でございますけれども、これを活用いたしまして、沖縄県や市町村においては、子供の福祉向上、学力向上、非行問題の解決などに力を入れているところでございます。例えば、一括交付金を活用いたしまして子育て総合支援モデル事業を実施をいたしまして、親への就業支援や養育相談などを実施をいたしております。また、子供たちの学力向上のため、市町村において学習支援員の配置を進めております。さらに、離島において、塾のない状況の中、希望者に対して公営学習塾を開設しているところもございます。また、非行問題に関しましても、青少年指導員などを設置しているところもございます。

また、御質問の保育所、そして学童クラブ等でございますけれども、安心こども基金や一括交付金を活用いたしまして、保育所の定員増を図るほか、放課後児童クラブへの、公的施設への移行の支援なども図っているところでございます。

こうした取組によりまして、子供たちの福祉向上に努めてまいりたいと考えているところでございます。

糸数慶子君

是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

次に、質問のまた方向を変えていきたいと思います。

人権条約個人通報制度と、それから面会交流についてでございます。

夫婦別姓訴訟で、東京高裁は三月二十八日、原告の訴えを棄却する判決を行いました。判決では、政府の世論調査を理由に法改正の必要性を否定的に述べていますが、法改正されないために苦しんでいる当事者からは、選択制なのに大多数が賛成するまで法律婚を認めないというのは納得できないと失望の声が上がっています。

政府の世論調査でも、人口補正をすると賛成が多かったことが三月十三日の法務委員会の行田委員への答弁でも明らかになりました。立法府も司法も法改正しない根拠として反対多数を挙げることの正当性は失われたと言えますが、そもそも少数者の人権を世論に委ねていてはいつまでたっても救済されないと考えます。

谷垣大臣はこの問題を人権問題とは捉えていないという御答弁でしたが、原告の塚本さんは半世紀以上も事実婚や通称使用しながら不都合や煩雑さに耐えてきました。これほどの不利益の蓄積が人権の問題と捉えられていないことは極めて問題でございます。そのことをまず申し上げて、質問に入りたいと思います。

人権条約の個人通報制度についてでありますが、今年は子どもの権利に関する初の国際的公式文書とされるジュネーブ子ども権利宣言が国際連盟で採択されて九十周年に当たります。また、四月十四日には子どもの権利条約新議定書が国際的に発効する節目の年でもあります。

新議定書、いわゆる個人通報制度がなかったのは九つの主な人権条約のうち子どもの権利条約だけでしたが、日本を含む五十一か国が共同提案国となっていて、二〇一一年六月に人権理事会に提案されました。同年十二月の国連総会において全会一致で採択されました。四月七日現在、四十五か国が署名をしておりますけれども、日本は、共同提案をしながら、いまだに署名はしておりません。女性差別撤廃条約や人権規約など他の人権条約の個人通報制度と一括で加盟を検討しているために、ハードルが高くなっているのではないかと思います。

これはNGOサイドから一括で加盟を求められたことはないようですが、なぜ一括での検討がされて加盟が実現しないのか、また個人通報制度の検討はいつから始まって、今後どのような結論を出されるのか、お伺いしたいと思います。

政府参考人(山田滝雄君・外務大臣官房参事官)

お答え申し上げます。

まず、御指摘の児童権利条約第三議定書でございますが、これにつきましては、御指摘のとおり、児童の権利の保護、促進に資することを期待して日本政府としては決議の共同提案国となったわけでございます。また、その他、御指摘のとおり、各人権関係の条約にはこれで全て個人通報制度ができております。

これらの諸条約につきましては、政府といたしましては、個人通報制度関係省庁研究会を開催し、外務省、法務省の協力の下、内閣府、文科省、厚労省、国交省、農水省、総務省、防衛省等関係省庁に集まっていただいて現在検討を重ねております。今年一月にも、東大の岩澤先生においでいただきまして検討会を開催したところでございます。

御指摘のとおり、これらの諸条約は一括加入の義務があるわけではございませんので、個別に入ってはどうかという御指摘があることは十分承知しております。そういうことも加味しながら検討しておりますが、他方で、我が国の司法制度や立法政策との関係では、いずれの議定書、またいずれの条約も様々な検討課題が残っておりまして、引き続き関係省庁とともに真剣に検討してまいりたいと考えております。

糸数慶子君

これ、具体的にはいつから検討されているでしょうか。検討されて何年目になっているんでしょうか。

政府参考人(山田滝雄君)

お答え申し上げます。

以前、研究会は外務、法務二省庁だけで開催しておりました。ただ、やはりこれはより政府全体としての検討が必要ということでございまして、平成十七年十二月からは、この研究会を改組し、幅広く関係省庁に参加を呼びかけてきているところでございます。

糸数慶子君

私は、いつから実際に検討が始まったかということをお伺いしたわけですけれども。

私が調べたところによりますと、実は検討が始まってからもう三十年もたっているということなんですが、このようにして時間を掛けて各省庁一緒になって検討するというふうに、一括で検討するというふうにおっしゃっていますけれども、今、国連からも、そして地元日本のNGOからも、一括で加盟をするとなかなかそのハードルが高くて進まないということを言われているというふうに思います。ですから、できるところから是非検討していただきたいというふうに思います。要望したいと思います。国連からも度々勧告されておりますので、早めに結論を出していただきますようにお願いを申し上げまして、最後にもう一点質問したいと思います。

女子差別撤廃条約の選択議定書については、二〇〇九年の第六回政府報告審査を前に、自民党の女性に関する特別委員会で選択議定書の批准に向けた議論が活発に行われ、提言がまとめられました。残念ながら決定には至っておりませんでしたが、谷垣大臣は当時賛成であったと伺っております。

大臣、改めて、この個人通報制度の批准に向けた御決意をお伺いいたします。

国務大臣(谷垣禎一君)

自民党の中で今先生のおっしゃった検討をしたのは私どもが野党の頃であったと思いますが、余り個々のことはよく記憶していないんですが、この今の個人通報制度ですね、条約をきちっと実効ある体制にしていこうという面ではなかなか面白い制度であるんですけれども、現実にじゃ国の制度とどう調和させていくかというと、相当難しいところがあるということは私否定し難いと思っております。

例えば、一応法的な効力はないとされているんですが、しかし、それを全部無視するというわけにもいかない場合が出てくると思うんですね。そうしますと、国内の確定判決と異なる内容の見解が出てきたとか、あるいは裁判係属中の事件について、今裁判をやっているのにこういうふうにせよというのが出てきたりというようなことでも、これはなかなか日本の制度と合わせていくのは難しいなというふうに、私、トータルに検討しているわけではありませんが、そういうところはそのように感じます。

したがいまして、先ほど外務省から御答弁がありましたが、相当きちっと詰めて検討しないとなかなか難しいのかなというふうに思っております。

糸数慶子君

先ほども申し上げましたけれども、やはり国連の方からも度々勧告されている問題でございます。是非具体的に検討して、やはり先進国としての状況を、是非世界に向けた状況で知らせていただきたい、それを実行していただきたいということを強く要望したいと思います。

質疑に関しては、あと三問ほど用意しておりますけれども、私の時間も来ておりますので、残りに関しましては、せっかくお越しいただきましたけれども、一般質問のときにまた質疑をさせていただきたいと思います。

以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。