国政報告

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違憲判断を勝ち取った原告に敬意

第185回国会 2013年11月28日 参議院法務委員会 (民法改正① 20分)

11月28日(木)、法務委員会で民法改正について、谷垣法務大臣に第一回目の質問を行いました。

①戸籍法改正が見送られたこと②嫡出用語・概念の撤廃③事実婚夫婦の単独親権④婚姻最低年齢と選択的夫婦別姓――を主な内容としたもの。

冒頭、私は「最高裁の違憲判断は、原告が長い年月をかけて最高裁までたたかったからこそ引き出したものであり、心から敬意を表したい」「96年の法制審議会答申を受け止め法改正していれば、原告は差別や偏見に苦しむことはなかった」と述べ、政府が見送った戸籍法改正についても議員立法として提出した理由を明らかにしました。

糸数慶子君

無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。

衆議院法務委員会の議論を見ておりますと、最高裁が違憲判断したから法を改正するというのではなく、民法を改正するというその立法府の強い意思を表明する必要があると主張する議員がいらっしゃる一方、最高裁の判断を受け入れることができず、婚外子やその母親をおとしめるような発言も多々ありました。最高裁が違憲判断するに至った経緯、また立法不作為が問われたのだということがいまだに理解されていないのではないかと危惧いたします。

既にほかの委員からも言及されていることですが、改めて私の意思を表明をしておきたいというふうに思います。

我が国には憲法裁判所がないため、法令が憲法に適合するかどうかは裁判所が具体的事件の解決に必要な限度で審査をする、いわゆる付随的審査制を取っています。ですから、原告が裁判をしなければ裁判所が勝手に違憲判断はできませんし、下級審で確定したり裁判の途中で和解されたりすれば一度最高裁で合憲とされた判断は覆らないことになるわけです。

今回の違憲判断も原告が長い年月を掛けて最高裁まで闘ったからこそ引き出した違憲判断であり、法改正を導いたというふうに言えると思います。原告となって裁判を闘ってこられた方々に改めて心から敬意を表したいと思います。法制審議会が様々な観点から慎重に議論し、九六年に答申した民法改正をきちんと受け止め法改正をしていれば、闘う必要もなかった裁判です。また、差別や偏見に苦しむこともなかったのではないかというふうに思います。

最高裁が法改正を促し、当事者からも改正すべきであると指摘されました戸籍法四十九条の改正については、今回法案提出が見送られました。合理性が乏しくなった規定を見直さないのは、政府や立法府の差別解消に消極的な姿勢を露呈するものと言わざるを得ません。本来であれば政府から提出されるべき法案でしたが、それがかなわず、私どもは議員立法案として提出せざるを得なかったわけです。

そこでお伺いしたいと思います。

戸籍法改正が見送られたことについてでありますが、十一月五日の法務委員会で、出生届の用紙に嫡出子、嫡出でない子の記載を義務付ける戸籍法四十九条の改正について、今国会で法改正が行われるのか谷垣大臣に伺いました。これに対しまして谷垣大臣は、改正法案を本国会に提出できるよう現在準備しているところでございますと答弁されました。

この答弁の直後、与党審査で了承が得られず、法改正を見送ったという報道がございました。谷垣大臣は、違憲決定直後の会見でも、法改正を示唆されていらっしゃいました。戸籍法の規定の存在の最大の根拠とされた婚外子相続分規定が削除されるわけですから、最高裁は、大臣の意向も踏まえ立法解決されるものと期待されていたというふうに思います。

九月二十六日の判決では、嫡出でない子の問題の発生を将来にわたって極力避けるためには、父母の婚姻関係の有無に係る記載内容の変更や削除を含め、出生届について、戸籍法の規定を含む制度の在り方についてしかるべき見直しの検討が行われることが望まれるところであると補足意見を付して、国会に規定削除を要請しております。

違憲判断されていないということを理由に法改正しないことになれば、婚外子相続規定の民法で問われた立法不作為を戸籍法でも繰り返し、将来その判断の過ちが指摘されるのではないかと懸念をしております。与党においては今回の最高裁の補足意見が届かなかったのは本当に残念だというふうに思いますが、谷垣大臣に改めて伺います。法改正の意向を示された国会答弁の直後、どの段階で何を理由に法改正を断念されたのでしょうか。

国務大臣(谷垣禎一君)

私がこの委員会でも戸籍法の改正も準備していると、それが出せるように今準備をしているところだという趣旨の答弁をいたしましたのはおっしゃるとおりでございます。

いついかなる段階でそれを断念したのかという、私ちょっと正確に日時は記憶しておりませんが、私どもは、要するに与党の中の議論と政府の中の議論、一体になって政策をつくって国会に法律を出していこうという体制を取っております。その与党審査の中で、これも先ほどから何遍も御答弁を申し上げているところでございますけれども、これは法令違憲の判断が出た民法九百条の問題に比べると、それほど急ぐ必要はないというのが与党の中での御議論でございました。したがいまして、現状では、今お出ししているようなものを内閣提案として出させていただいているわけでございます。

糸数慶子君

先ほどから多くの質疑者がお話しされているところでございますけれども、やはり最高裁から出たことに対する立法府としてのやるべきこと、本当に残念ながら後退してしまうのはちょっと私は遺憾に思います。

嫡出用語と嫡出概念の撤廃について次に伺います。

十一月五日の参議院法務委員会で、嫡出用語や嫡出概念は見直しを行うべきではないかという私の質問に対しまして、深山政府参考人は、嫡出という用語につきましては国連の各種人権委員会からその使用の撤廃を勧告されたことがあるというのは承知しております。各種の人権委員会からの勧告に対しては、条約締結国として誠実に対処する必要があるのはもとよりでございますが、他方で、このような勧告は法的拘束力を有するものではないというふうにも理解しているところです。嫡出でない子という用語は、あくまでも法律上の婚姻関係にない男女間の間に出生した子を意味するものとして民法、戸籍法で用いられている法律用語でございまして、差別的な意味合いを含むものではないと思っております。したがって、現段階でこの用語の使用を見直すための法改正をする必要まではないと思っておりますと答弁をされました。

そこで、お伺いいたしますが、民法の条文上使われている嫡出でない子ですが、民法には用語の説明はありません。法律上の婚姻関係にない男女の間に出生した子を意味するというのも理解はしております。しかし、嫡というその言葉には正統あるいは正しく受け継ぐという意味もありますので、嫡出でない子は正統でない子となってしまうため、当事者から使用しないでほしいと求められています。ですから、国連の社会権規約委員会は二〇〇一年に嫡出概念の撤廃を、子どもの権利委員会は二〇〇四年に嫡出でない子という差別用語を使用しないよう求めたのだというふうに思います。諸外国を見ても、嫡出概念や嫡出用語の撤廃は行われております。

二〇一〇年三月、法務省は、嫡出でない子の出生の届出に当たり、届け書の父母との続き柄の欄の表記等がされていない場合の取扱いについて通知を出されていますが、これは当事者への配慮があったからではないでしょうか。二〇一二年七月二十七日の衆議院法務委員会で、嫡出用語を見直すよう求められた政府参考人の原優民事局長は、民法で現在、嫡出である子あるいは嫡出でない子という言葉が使われておりますので、この言葉を今後、法改正をする場合にどうするかというのは検討事項だというふうに考えておりますと答弁をされています。民法にも最も精通した前局長の御答弁も差別的意味合いを含むとの認識があり、そのような答弁だったというふうに私は理解しております。

用語の見直しが必要だと思いますが、谷垣大臣の御見解をお聞かせください。

国務大臣(谷垣禎一君)

私は、日本語は言霊というものがあるという御意見がありまして、一つ一つの言葉が、何というか、中立的な概念として使われるという以上にいろんな陰影を帯びて使われるという局面があるのは承知いたしております。

ただ私は、余りにも、頭の固い法律家だと糸数先生に言われるかもしれませんが、嫡出子という概念はあくまで法律上の婚姻から生まれた子というふうにとらえておりまして、それに特別なニュアンスというか陰影を余りにも付け加えて運用していくのは好ましくないと私は考えております。

ですから、私は、あくまで嫡出概念というのは法律上の婚姻によって生まれた子であるかと。しかし、これは、ですから私の考え方からしますと、そこを改めるということは、法律婚から生まれた子と法律婚から生まれなかった子という民法の区別そのものを、何というんでしょうか、いじらなければなかなかできないのではないかと私自身はそのように考えております。

糸数慶子君

私、谷垣大臣は決して頭の固い大臣だとは思っておりません。

当事者のやはり受ける印象、そして周りの社会的な状況から考えましても、やはりもうこの辺りでそろそろ変えていくべきだというふうに思います。それは以前の政府参考人からもそういうような、原優民事局長もそういうことをきちんと答弁をされた事実があるわけで、やはりもう少し頭を柔らかくしていただいて変えていただくということを要望したいと思います。

次に、条約実施義務についてでありますが、条約加盟国には条約実施義務があります。憲法九十八条二項でも、日本が締結した条約は、これを誠実に遵守する必要があると規定しています。国連の各人権委員会が何度も勧告しているのは、日本の規定が条約に適合していないからではないでしょうか。国連の勧告を引き合いに法改正を求めると、谷垣大臣は、勧告を果たせないのは保守の側が反対しているものもあれば革新の側が反対してできないものもある、国際世論や人権規約が言っているというような形の議論を避けてきたという趣旨の御答弁もされていらっしゃいますが、今回の最高裁決定においても国連からの勧告が判断に取り入れられました。これはとても重く受け止めるべきだというふうに思います。深山政府参考人の、誠実に対処する必要があるが、他方で、勧告は法的拘束力を有するものではないという発言は、勧告に法的拘束力がないから繰り返し勧告を受けても問題ないというメッセージになってしまうのではないかと思いますが、いかがでございましょうか、お伺いいたします。

政府参考人(深山卓也君・法務省民事局長)

先日の法務委員会におきましても、この点について、今御指摘のとおり、法的拘束力を有するものではないという御答弁を申し上げました。

この法的拘束力を有するものではないということの意味ですけれども、我が国が勧告を受けたことにより直ちに国内法整備の法的義務を条約上負うというものではないと、そこに尽きるものでございまして、この勧告がどういう効果を持つかということについてのこれまでの一般的な政府の理解を述べたものでございます。条約締約国として勧告を無視してよいとか、ないのと同じだと、そういう趣旨で申し上げているものではございません。

もとより、その勧告を尊重して誠実に対処する必要があると考えておりますが、引き続き国連の人権関係の各委員会に対しては我が国の立場を丁寧に説明するなどして、誠実な対応をすべきものと思っております。

糸数慶子君

誠実に是非対応していただいて、ちゃんとした成果を出していただきたいというふうに思います。

次に、事実婚夫婦の単独親権について伺います。

婚外子の場合、父母どちらかの単独親権となっています。父母が事実婚で一緒に子供を養育していても共同親権は認められていません。父母の片方にしか親権がないことは、親権のない親にとってはつらいことだと思います。事実婚を法律婚と同等に扱うようになっている中、事実婚には共同親権を認めないことについて合理的な理由があると思えないのですが、改めて谷垣大臣の御見解を伺います。

国務大臣(谷垣禎一君)

民法上、父母の婚姻中は父母が共同して親権を行使すると、それから、嫡出でない子の場合には母又は父が単独で親権を行使すると、こういう規定の仕方になっております。こういう規定をしているのは、民法が法律上の夫婦とその間に生まれた嫡出子から成る婚姻共同体、これを基礎として親族間の様々な法律関係を規律していこうという基本的な考え方を取っている反映だろうと私は思うんです。

それで、それに対して事実婚の場合は、子の両親、父、母、この結び付きや生活状況というのは極めて様々であろうと思います。したがって、一定の状況を前提とした規律に親しみにくい面があるのではないか。今、共同親権とおっしゃったけれども、本当に共同親権というのがうまく機能していく状況にあるのかどうかというようなことが、単独親権とされてきた、そういう規定となっている考え方の背景にはそういうことがあるのではないかと思っております。

それで、これをどう考えていくかというのはいろいろ議論があろうかと思っておりますが、離婚した場合にも共同親権にせよというような御議論が今、おっしゃる方があることも事実でございます。可能性としてはいろんなことがあり得ると思いますが、現在のところ、私は、そういう基礎を考えますと、必ずしも不合理な規定だというふうには考えておりません。

糸数慶子君

事実婚夫婦にも法律婚と同様に様々な行政サービスが提供され、配偶者として広く認められていることもあるわけで、ある意味、親として認めていないということになります。諸外国でも共同親権が認められており、この規定、単独親権は早急に改正されるべきだというふうに考えます。

そして、最後にお伺いいたしますが、谷垣大臣が自民党の様々な意見がある中で御苦労されていることは一定の理解を私も示しております。法律家でいらっしゃる谷垣大臣が婚外子相続分規定以外の民法の改正について世論を理由に否定的な発言をされていることは残念な思いもいたしますが、谷垣大臣には、人権の問題としてこの法改正が必要との立場から、個別に一つだけ伺いたいと思います。

婚姻適齢についてでありますが、現行民法では婚姻の最低年齢は男性十八歳、女性十六歳と規定しています。十月三十日に公表された二〇一三年版世界人口白書でも児童婚が取り上げられています。国連は十八歳未満の婚姻を児童婚と指摘し、最低年齢の引上げを求めています。婚姻最低年齢については国により差がありますが、男女に差を設けている国は余り見られません。これは日本や中国ぐらいです。

日本における高等教育への進学率も男女差がなくなっており、その差を設ける合理性がないと思いますが、女性だけ十六歳としているその民法の改正は必要がないとの御認識でしょうか。

国務大臣(谷垣禎一君)

これ、なぜ十六歳、私、昔からそういう、男は十八歳、十六歳という規定であると実は最近まで誤解しておりまして、調べましたら、昭和二十二年の民法改正でこういう規定になったということでございます。それまでは十七歳、十五歳ということであったということでございます。

それで、実際に昔の例などを考えますと、女性はかなり早く結婚をしたということもあったようでございます。今はまあ割に晩婚化でございますから、十六歳というのはどうかという御意見が出るのはよく分かりますが、かつてかなり若い年齢で婚姻をしていくということもあって、それは男女間に差別を設けているということでは必ずしもなくて、一般に女性の方が心身の発達が早くて低年齢での婚姻ということがあったということを反映しているんだろうと思います。

だから、必ずしも私はこれがすぐ、何というんでしょうか、理由のない差別であるというふうには考えていないわけですが、しかし、女性の婚姻年齢を十八歳に引き上げるということについては、平成八年の法制審議会の答申にも既に含まれておりました。

この問題、やはり、何というんでしょうか、ただ放置しておけばよい、放置というとちょっと表現が悪うございますが、十六歳のままでいいのかどうか、こういった平成八年の法制審議会の答申もございますから、更に議論を深めていく必要があると思っております。

糸数慶子君

まだ通告はかなりしておりましたけど、時間になりましたので、今日はこれで終わりたいと思います。

ありがとうございました。