国政報告

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厳罰化だけでなく交通政策の確立も

第185回国会 2013年11月19日 参議院法務委員会(自動車運転死傷行為処罰法③ 15分)

11月19日(火)、法務委員会で「自動車運転死傷行為処罰法」の3回目の質疑を行いました。

①交通事犯者に対する再発防止プログラムの充実②「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気」を政令で定める際のプロセスについて谷垣法務大臣に質問しました。

「発作が再発するおそれがないと適正に運転免許を取得できる者に対して、自動車運転への過剰な萎縮効果を与えることになりかねない」「一定の病気に起因する悲惨な事故を防ぐための措置が必要としても、そのような事態が生じないよう、患者団体に対して法律の趣旨をよく説明し、病名による差別、偏見が助長されないよう、国民に情報提供を積極的に行うべきである」と問題点を指摘しました。

※「自動車運転死傷行為処罰法」は19日の法務委員会において全会一致で可決。
翌20日の参議院本会議でも、「被害者の会」の家族の皆さんが見守る中、全会一致で可決されました。

糸数慶子君

無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。

私、刑事施設内における交通事犯者に対する再発防止のプログラムの充実について一点目にお伺いをしたいと思います。

再発防止の観点からは刑務所内における処遇もまた重要です。平成十九年の刑法改正に当たり参議院法務委員会は、附帯決議の中で、自動車が移動や輸送の日常的な手段となっていることを踏まえ、交通刑務所等の矯正施設における安全運転に資する処遇プログラムの更なる充実を図る等、再犯防止策の一層の充実強化に努めることを求めていますが、法改正後に充実させた点、再犯防止の観点で効果が認められた点についてまずお伺いしたいと思います。

政府参考人(西田博君・法務省矯正局長)

お答えいたします。

現在、刑事施設におきましては、被害者の生命や身体に重大な影響を及ぼした交通事犯を起こした受刑者、それから重大な交通違反を反復した受刑者に対しまして、交通違反や事故の原因等について考えさせることを通じまして、遵法精神、責任観念、人命尊重の精神等を涵養することを目的といたしまして交通安全指導という改善指導を実施しております。

この指導内容でございますけれども、講義あるいはグループワーク等によりまして、飲酒運転の危険性やその防止策、被害者、その遺族への謝罪や賠償の方法等について考えさせるといったものとなっております。

処遇の充実強化という話がございましたけれども、これにつきましては、新たに飲酒運転事犯者対策としまして平成二十二年から、アルコール依存の問題を抱えている者に対しまして、一部の施設において民間自助グループの協力を得ましてアルコール依存回復プログラムを試行しているところでございます。

また、交通安全指導の実施施設数でございますけれども、平成十八年度には二十庁でございましたけれども、順次これを拡大いたしまして、現在は五十四庁において実施しているところでございます。

今後も、交通事犯受刑者に対するこういった指導につきましては充実強化を図ってまいりたいというふうに考えております。

以上でございます。

糸数慶子君

今回の法律案提出ですが、これは被害者団体からの要望が契機となっております。これ以上悲惨な交通事故を繰り返さないでほしいという思いが根底にあるからで、やはり刑務所内では特別改善指導として被害者の視点を取り入れた教育が行われていますが、その内容と効果について伺います。

政府参考人(西田博君)

お答え申し上げます。

交通事犯者のうち、被害者の命を奪ったり、又はその身体に重大な被害をもたらすような犯罪を犯した者につきましては、交通安全指導に加えまして被害者の視点を取り入れた教育を実施しているところでございます。

この指導は、自らの犯罪と向き合うこと、これは受刑生活を通じても大事ですけれども、犯した罪の大きさや被害者及びその遺族等の心情等を正しく認識させた上で誠意を持って対応していくことを目的として実施しているものでございます。指導に当たりましては、被害者及びその遺族の方々の実情を受刑者に正しく理解させるために、被害者やその遺族の方々、犯罪被害者支援団体のメンバー等をゲストスピーカーとして紹介しているところでございます。

今後も、そういった方々の理解と協力を得まして、同指導の充実強化を図ってまいりたいというふうに考えております。

以上でございます。

糸数慶子君

ありがとうございました。

次に、自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気を政令で定める際のプロセスについてでありますが、第三条第二項の自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気については、谷垣法務大臣の方から、政令で定めるに当たっては、医学に関する専門家から対象とする病気やその症状等について専門的な意見も伺った上で、対象とすべきものと適切に規定していきたいという旨の答弁がなされています。

そこで、政令を制定するに当たっては、医学に関する専門家のほかにどのような方から意見を聞くことを想定しているのか、お伺いします。今回の法律案に対しても、患者団体からは懸念する意見が強く、患者団体からも意見を聞くべきであると考えますが、政令の制定のプロセスに患者団体も参加することになるのでしょうか、お伺いいたします。

政府参考人(稲田伸夫君・法務省刑事局長)

本罪の自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気を政令で規定する際には、対象とする病気やその症状などについて専門的な御意見を聞く必要があると考えております。ただ、現時点でどのような団体の御意見を伺うかまで決めているところではございませんで、今後、政令案の立案と並行して検討していきたいと考えております。

また、政令の制定に先立ちまして、行政手続法の三十九条一項の定めるところに従いまして、国民から広く意見を募集するいわゆるパブリックコメントを行う予定にもいたしております。

糸数慶子君

自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気に関しては、一度政令を定めたらそれで終わりということではなく、最新の医学的知見が反映されるよう必要に応じて見直しを行うことが求められます。例えば、本法施行後において、医学関係者や患者団体と意見交換をする場を設けることは考えているのでしょうか。

政府参考人(稲田伸夫君)

先ほども御答弁申し上げましたように、三条二項の自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気を政令で規定する際には、専門的な御意見を聴取することにいたしているところでございます。この規定に際しましては、運転免許の欠格事由とされている病気の例を参考として定めていきたいというふうに考えているところでございます。

いずれにいたしましても、この法律は、まさに今回の法律案において初めて導入する類型がこの三条二項の危険運転致死傷罪でございますことから、引き続き、運転免許の欠格事由の対象とされる病気の例を参考としつつ、しかもその運転免許の欠格事由の対象とされる病気の例の動向に留意しながら、本罪の適用状況などにつきましても更に注視をしていきたいと考えております。

その上で、将来、医学的知見が変化するなどして道路交通法令におきまして新たな一定の症状を呈する病気が類型化され、運転免許の欠格事由に追加され、あるいは現行の欠格事由の一部が欠格事由とされなくなるなどの改正がなされる場合には、それを危険運転致死傷罪の対象とするかを含めて検討してまいりたいと考えておりまして、その際には改めて専門的な意見を聞くことになるものと考えております。

糸数慶子君

この法律案が成立した場合、発作が再発するおそれがないとして適正に運転免許を取得できる者に対しても、自動車運転への過剰な萎縮効果を与えることになりかねません。一定の病気に起因する悲惨な事故を防ぐための措置が必要であるとしても、そのような事態が生じないよう患者団体に対しては法律の趣旨について丁寧に説明をするとともに、病名による差別、偏見が助長されないよう国民に対しても情報提供を積極的に行っていくべきであると思います。

患者団体への対応並びに法律の趣旨及び内容の国民への周知に対して、具体的にどのような手法を考えていらっしゃるのでしょうか。谷垣大臣にお伺いいたします。

国務大臣(谷垣禎一君)

御指摘のような懸念は生じないようにしなければならないわけでございます。まずは、政令等の決め方、専門家等の御意見をよく伺って適切、妥当なものにしませんと、今おっしゃったような懸念が生じてくる可能性がございます。まず差し当たってこれをしっかりやらなきゃいけません。

それに加えまして、法律の内容あるいはその適用範囲等々につきまして、患者団体を、患者さんを含む国民一般に幅広く、患者さんに知っていただくだけじゃなしに、やっぱり国民一般に、ああ、そういうものなんだという理解をしていただくことが必要であろうかと思います。

そこで、ちょっと疑問が起こったときには、やはり法務省のホームページにアクセスしていただくと、そこでよく分かりやすい適切な解説が書かれているということをまずしなければいけません。それから、通達等々でも意を用いまして、誤解ないし懸念の生じないように努めてまいりたいと考えております。

糸数慶子君

ありがとうございました。

第百八十三回国会におきまして、一定の病気等に係る運転者対策等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律案が成立いたしましたが、その際、参議院内閣委員会は、これは附帯決議、平成二十五年の五月十六日の附帯決議の中で、一定の病気等に該当する者の生活実態について十分な把握に努め、一定の病気等に該当する者が社会生活上での不利益や支障を受けないよう、医療、福祉、保健、教育、雇用などの総合的な支援策を充実させることを政府に対して求めています。

また、去る十四日木曜日に行われました参考人質疑の中で、日本てんかん協会副会長の久保田英幹さんからも、一昨年の栃木県鹿沼市での事故以降、電話相談の件数が大幅に増えていることに言及がありました。相談の中には、免許を取り上げられたら仕事ができなくなるだけでなく、田舎で暮らしていけないといった深刻なものもありました。てんかん患者などが病状を隠して運転免許を取得し自動車を運転しようとする背景には、免許がないと就職できない、免許が取り消されると失職してしまうのではないかといった不安、特に地方においては生活すら満足にできないといった事情もあると思われます。

高齢者による交通事故を防ぐためにも、今後の超高齢化社会をにらんで、自動車がなくても生活ができる環境の整備を、これを国を挙げて進めるべきだというふうに考えますが、谷垣大臣に改めてこの件についてお伺いをしたいと思います。

国務大臣(谷垣禎一君)

今、糸数委員がおっしゃったことは私も大変感ずるところがございまして、私のところは水害の常襲地帯なんですが、水害が起きそうだとなると、起こるようなところは、まず車を水のつからないところに避難させます。それは、公共交通機関が発達していない田舎では、車がなくなると後の生活がなかなかできなくなるから、すぐにまずそういう行動を取るということがございます。ですから、今委員が御指摘になりましたように、ある病気を抱えておられるような方が車をうまく使えないと生活していけないというお気持ちは、私も痛いほどよく分かるわけでございます。

ただ、これは法務省だけでできるわけではございません。公共交通網をどうしていくか、過疎地の例えばバス体系等々をどうしていくかとか、いろんな問題がございますから、政府で衆知を尽くしていかなければいけないことだと考えております。

糸数慶子君

ありがとうございました。

交通事故を減らすためには、単に交通法規を重罰化したり処罰範囲を拡大したりするだけでは限界があるというのは、この議論を通して十分に分かるわけですが、平成十九年の刑法改正の際に参議院法務委員会は、附帯決議において、これは平成十九年四月十七日の附帯決議です、自動車事故の防止には、運転者の安全意識のみならず、道路交通環境の整備、自動車の構造改善、運転者の勤務環境の整備、さらに交通安全教育の充実など多面的、総合的に取り組む必要があることに鑑み、本改正と併せて関係機関等の更なる連携の強化を図り、必要な施策が一層総合的に推進されるように努めることということで、政府に対して求めております。

今回のこの本法案の改正に関しましても、先ほども申し上げました患者団体あるいは被害者団体の広い意見を聴取して、改めてこの法律案に対する議論がなされました。また、私もこの法案に関しましては反対するものではありませんけれども、附帯決議などを通してなお一層のその充実を図ること、改めて政府に求めまして、私の質疑は終わりたいと思います。

ありがとうございました。