国政報告

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被害者家族の痛みに共感、萎縮効果に配慮を

第185回国会 2013年11月14日 参議院法務委員会(自動車運転死傷行為処罰法②-参考人質疑 20分)

11月14日(木)、法務委員会で参考人質疑が行われました。参考人は、塩見淳(京都大学大学院法学研究科教授)、小谷真樹(京都交通事故被害者の会古都の翼)、久保田英幹(公益社団法人日本てんかん協会副会長)、三野進(公益社団法人日本精神神経学会法委員会主担当理事)の4氏。

意見陳述の後、私は、①アルコール等影響発覚免脱罪の新設②重罰化への交通事故被害者の感想③てんかん患者さんの懸念の声④病気と危険運転の関係-などについて伺いました。

糸数慶子君

無所属の糸数慶子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

塩見参考人、それから小谷参考人、久保田参考人、三野参考人、本当にお忙しい中お越しいただきまして、似たような多分質疑になる可能性もありますが、私が最後でございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

まず、自動車の扱い方を誤ればやはり人の命を奪う、そういう凶器になります。その正しい扱い方を学ばずにハンドルを握ることはあってはならないと思います。まして、無免許運転は社会的に絶対に許されない行為であり、無免許運転はそれ自体非常に危険であるというのが社会一般のとらえ方であります。もしその無免許運転で人を死傷させて何らの罰則も厳罰も処されないというふうなことになれば、運転免許を軽視する風潮を生み出すことになり、ひいてはこの免許制度を崩壊させてしまう危険すらあります。そういう観点からいきますと、先ほどの小谷参考人のお話を伺いまして、本当に事故現場の状況を改めて思い起こし、その思いを強くいたしております。

それで最初に、小谷参考人にお伺いをしたいと思いますが、今回のこの無免許運転についての法改正の第六条について、この第二条の危険運転致死傷罪、それから第三条の危険運転致死傷罪、それから第四条の過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪、又は第五条の過失運転致死傷罪を犯した者が、その罪を犯したときに無免許運転であったときの、加重したその法定刑で処罰する規定が設けられていますが、今回の法律案が無免許運転を危険運転致死傷罪のその類型には加えられず、無免許運転による加重という形で提出されたことに対する率直なお考えをお伺いしたいと思います。

参考人(小谷真樹君)

先ほどからもちょっと言っているかもしれないですけど、率直な意見といたしましては、納得も理解もどちらもできておりません。

糸数慶子君

無免許運転を含めて、この悲惨な交通事故を減らすためには厳罰化に加えてどのような施策が必要であるというふうにお考えでしょうか、お伺いいたします。

委員長(荒木清寛君)

小谷参考人でよろしいですか。

糸数慶子君

はい。小谷参考人、お願いいたします。

参考人(小谷真樹君)

もちろん、僕は法律のことに関しては全く無知でありますし、このような場所でこのようなことを述べていいのか本当に分からないですけれども、遺族として本当に、先ほどもお話ししていただいたように、無免許運転は社会で絶対に許されないものでありますし、それをした上で人を死傷させたのならば、飲酒運転が絶対にしてはならないものとされ、それをした上で人を死傷させた結果という、その罰し方と同等の扱いをされていいものだというふうに思っておりますので、やっぱり今後もそういった罰則の強化をしていただいて、その中で運用が、実質の運用というのは裁判所の判断になるでしょうし、その中でいろいろと裁判所の方が判断した中で刑を振り分けていっていただいたらいいだけで、実際のその扱いといたしましては、飲酒運転や速度超過と同じような扱いをされるべきだというふうに考えております。

糸数慶子君

ありがとうございました。

次に、塩見参考人にお伺いをしたいと思います。

第四条で過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪が新設されることに対し、六月二十一日の衆議院法務委員会に参考人として出席されました飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会共同代表の佐藤悦子さんからは、評価する意見が述べられた一方、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的でと、この目的を限定したことによって被疑者の供述次第では同罪の適用がなくなるおそれがあるとの指摘がされています。

例えば、その被疑者が、飲酒運転が発覚することが怖くて逃げてしまった、頭が白くなって思わず逃げてしまった、自分が犯人であることを隠すために逃げてしまったと主張した場合、これらはこの免れる目的があったと判断されるのか否か、どのような形で立証が行われるべきであるというふうにお考えでしょうか、お伺いいたします。

参考人(塩見淳君)

四条の目的でございますが、「有無又は程度が発覚することを免れる目的」と、目的という言葉を使っておりますので、何かそれを主たる意図をするという形で受け取られることもあるかもしれませんが、それほど厳しいというか、ハードルの高い要件ではないのではないかというふうに思っております。

それは、その後に免れるべき行為というものを客観的にしたと。この免れるべき行為というのは比較的広くとらえられるだろうと。ある程度の時間経過を伴いますと血中アルコール濃度等は下がりますので、現場から離れるといった行為をすれば、これで免れるべき行為をしたと。そうしますと、その免れるべき行為をしているということの認識があれば、基本的にはこの免れる目的というのは肯定されるのが原則ということになるかと思われます。

ですから、具体的な事実にもよりますけれども、頭が白くなったとか怖くなったというだけで、そのやっていることの意味というものが分かっていれば、免れるべき行為に当たる行為をやっているということがきちんと認識できていれば、これは目的というのは原則肯定される方向に働くのだろうというふうに思います。

ただし、酒を飲んで、例えば子供を病院に連れていく途中で、取りあえず病院に子供を先に連れていかなければならないと、そういった特殊な事情がある場合については、この免れる目的がなかったという形で処理をされることもあるだろうというのは、これは刑事法部会でも事務当局から説明のあったところでありますし、そういう場合はあり得ると、そういう場合に限られることになるのではないかと思います。

糸数慶子君

刑法上、自己の、塩見参考人ですが、刑事責任に関する証拠隠滅行為、これは期待可能性がないことを理由に不可罰とされているところ、第四条の規定は、アルコール等の影響という自己の刑事事件に関する証拠を隠滅する行為を罰する性格を持っているところから、アルコール等の影響の発覚を免れるべき行為を行うことについても期待可能性がないのではないかとの指摘もありますが、その点はどのように整理されたのか、お伺いいたします。

参考人(塩見淳君)

この点につきましては、期待可能性がないのではないかという議論は委員の中でも強く主張される方もいらっしゃいました。

期待可能性があるかないかというのは、ある意味ではケース・バイ・ケースによるところがありまして、自己の刑事責任、刑事事件に関する証拠の隠滅をしないというのがそれほど絶対的な要請かというとそうでもないだろうということで、まず自己の刑事責任に関する証拠を他人に教唆したような場合については教唆罪が成立をするというのが判例になっておりますので、これ教唆ですから少し違いますけれども、そういった事例もあるだろうということと、それからやはり、自動車の運転を免許を受けて行っていると。特別の行為をしながら、特別許された行為をしながら死傷事故を発生させておいて、しかしながら、その現場についての証拠を隠滅するというような行為については、やはり特別な考慮というものが生じるのではないかと。さらに、血中アルコール濃度等については、やはり時間がたつとすぐ消えてしまうような証拠であるという証拠の特殊性もあるだろうと。

こういったことで、一方ではその期待可能性がないのではないかという議論を踏まえつつ、総合的にはやはり処罰は可能だろうという結論に至ったというのが部会の大きな流れだったのではないかというふうに思っております。

糸数慶子君

ありがとうございました。

次に、久保田参考人にお伺いをしたいと思います。

一昨年の栃木県鹿沼市での事故以降、政府は今回の法律案や道路交通法の改正について議論を進めておりますが、この議論が進む過程において、てんかんの患者さんから相談の件数増えてきたでしょうか。また、具体的にどのような点に不安を感じているのかお伺いするのと同時に、てんかんの症状を隠して運転免許を取得し、自動車を運転しようとした背景には何があるとお考えでしょうか。てんかん患者の皆さんが社会生活を営む上で支障を生じないようにするためにはどのような施策が必要であるか、お伺いいたします。

参考人(久保田英幹君)

お手元の資料で二十ページを御覧ください。この左上の表ですけれども、二〇一〇年、二〇一一年、二〇一二年と、一年間の相談件数が内容別に記されております。

二〇一〇年までの七百二十二件は、これ以前、四、五年間の平均とほぼ同じ数字になっております。二〇一一年は鹿沼の事故が起こった年でありまして、二〇一二年は京都の祇園での事故が起こった年であります。

見ていただけますように、医療に関する相談が、当協会、常に五〇%以上、最多だったわけですけれども、その相談も増えてきておりますけれども、全くなかった、ゼロではありませんけれども非常に少なかった欠格条項・権利、これは運転免許に関する相談ですけれども、急激に増えております。同時に、働くことの相談、先ほども御質問いただきましたけれども、事業主の方あるいは企業者の方から働くこと、あるいは教育の相談ということが激増しております。

そして、これらの事故を受け、また厳罰化の流れの中で、先ほども触れましたけれども、てんかんという病気が症状の程度あるいは発作の抑制の状況を問わず極めて危険であるということで、長期にわたって発作が止まっていて何の問題もない人が、病名を告知してあったばかりに辞めてもらいたいとか、車の運転をしないように、あるいは車の運転をしない部署に移るようにと、それでは給料が減るので家族を養えないと、だったら辞めていただきたいというような、障害であるとか病気の状態に即する以前の問題として、病名そのもので差別される、そして生活が成り立たなくなっていくという方が多数ございます。

糸数慶子君

ありがとうございました。

最後になりますが、三野参考人にお伺いしたいと思います。時間もありませんので、一点だけお伺いをしたいと思います。

統合失調症についてですが、第三条第二項の自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気については政令で定めることになるが、政府の答弁によりますと、責任能力の観点から認知症が対象外とされる一方、統合失調症は対象とされています。統合失調症を対象とすることに対する医師としての御意見をお伺いいたします。

参考人(三野進君)

先ほどから申し上げておりますように、認知症の場合は現在、絶対的な欠格になっております。統合失調症については免許を与えることができる相対的な欠格になっておりますけれども、それでもやはり根拠はございません。発作性の疾患とか、あるいはどんどん総合的な知能の低下が起こるようなそういう病態とは違いますので、そういう意味で、なぜあえて危険運転あるいは運転の不適性になるような病気として統合失調症が定められたのか、全く我々は理解できないところでございます。そのことによって不当な差別や運転免許を奪われることがあってはならないというふうに私は思っております。

糸数慶子君

時間ですのでこれで終わりたいと思います。四人の参考人の皆さん、ありがとうございました。