国政報告

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警察権限拡大に懸念

第180回国会 2012年6月14日 参議院内閣委員会(死因2法 15分)

6月14日、内閣委員会で死因2法(※)について質問しました。
①想定する死因究明専門機関②人材の育成③死因統計の信頼性④警察の権限拡大への懸念の4点について、法案提出者の下村博文・元衆院内閣委員長らと松原国家公安委員長に質問しました。
※死因2法―「死因究明推進法」と「警察などが取り扱う死体の死因又は身元調査法」

糸数慶子君

無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。

死因究明二法案について、まず想定する死因究明専門機関についてのお尋ねをいたします。

警察庁の有識者会議の最終取りまとめによりますと、調査した六か国のいずれもが日本より解剖率が高く、死因を特定するための専門機関が設置されていると申しますが、推進法第六条第一項第一号に、重点的に検討され、及び実施されるべき施策として、法医学に関する知見を活用して死因究明を行う専門的な機関の全国的な整備が挙げられています。

法案提出者はどのような機関を想定していらっしゃるのか、お伺いいたします。

衆議院議員(下村博文君)

お答えいたします。

法医学に関する知見を活用して死因究明を行う専門的な機関の姿は、死因究明推進法に基づき設置される死因究明等推進会議において検討されることとなっております。例えば、犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会は、昨年四月に、法医学研究所という専門機関を国の機関として都道府県ごとに設置するが、当面は監察医制度に基づく機関や大学法医学教室等を法医学研究所として国が指定し、その機能を併せ持たせると、このような提言を行っております。

提案者としては、この機関の具体的な姿を現時点でお答えすることについては差し控えさせていただきますが、このような、世の知見を参考にしつつ、最も良い形を死因究明推進会議において設計していただきたいと考えているところでございます。

糸数慶子君

次に、人材の育成についてでありますが、推進法第六条第一項の、重点的に検討され、及び実施されるべき施策として、法医学に係る教育及び研究の拠点の整備、第二号、死因究明等に係る業務に従事する警察等の職員、医師、歯科医師等の人材の育成及び資質の充実、第三号が挙げられています。

最終取りまとめによりますと、解剖率が、先ほどもありましたが、11%である日本の人口百万人当たりの解剖医師数が約1.3人、90%近い解剖率のスウェーデンが約5.4人というふうに言われております。また、日本法医学会が平成二十一年に実施した法医学教室現況調査、そのアンケートによりますと、教員の定員削減、経費の削減等が行われているとのことでありますが、法案提出者は、拠点整備、それから人材育成についてどのような考えを持っていらっしゃるのでしょうか、お伺いいたします。

衆議院議員(下村博文君)

現在の死因究明の人材体制については、委員御指摘のとおり、質、量の面で様々な問題があるというふうに考えております。

例えば、警察が取り扱う死体について、全ての死体の調査に専門的知見を有する検視官が臨場しているわけではなく、警察署の捜査員が臨場し、医師の検案結果を併せて死因を判断する場合が多いことから、検察官だけでなく捜査員においても、死因究明の知識、経験を充実させる必要があると考えます。

また、検案を行う医師について言えば、現在全国で約四千人の方がおられますが、そのほとんどは、地域の臨床医として診療、治療等を行う傍ら、各都道府県警察からの要請を受けて立会い、併せて検案を行っているのが実態でありまして、このような方々の中には法医学の専門的な知識と経験を有していないという方々も少なくないと、こういう指摘もございます。

さらに、委員御指摘のとおり、例えば司法解剖などの解剖を行い、また人材の養成の場である大学法医学教室においては、十分な予算、教員定員が確保されていない中で、学生が法医に進むインセンティブが高まらず、後継者の確保も困難な状況に立たされているという状況がございます。

提案者としては、このような現状を踏まえ、法医学に係る教育及び研究の拠点の整備や、警察等の職員、そして医師、歯科医師等の人材の育成、資質の向上を重点的に検討され、及び実施されるべき施策として基本方針に規定したところでございまして、これに即して死因究明等推進会議において議論がなされ、政府において、必要な法制上、財政上の措置を定めた死因究明等推進計画が作成され、施策が実施されなければならないというふうに考えているところでございます。

糸数慶子君

次に、死因統計の信頼性についてでありますが、平成二十年に行われました衆議院法務委員長主催の死因究明制度の勉強会の概要によりますと、これは監察医制度のある県と、それからない県との間で死因の内訳に歴然たる違いがあり、実態を反映した統計となっていないため、世界各国に誤解を与えているという状況です。そして、先進国で死因統計が信頼、信用されていないのは我が国だけだというふうに言われておりますが、我が国の死因統計の問題についてどう考えていらっしゃるのか、世界に信頼される死因統計とするために二法案はどのような役割を果たすのか、法案提出者にお伺いをいたします。

衆議院議員(下村博文君)

御指摘のように、当時、衆議院の法務委員長を私がさせていただいておりまして、勉強会をしてまいりました。そういう中で、日本の死因統計の信頼性に疑義があるという指摘はよく承知しているところでございます。原因としては、死因を十分に調査しないまま安易に心不全の検案書が出されているのではないかという疑念も生じておりますが、いずれにしても、死因の統計を基に各種の施策が講じられることに鑑み、死因統計を信頼されるものとすべきことは当然のことでございます。

日本において死因の究明が十分に行われない大きな理由は、これに携わる行政の体制や人材が十分でないことでございますが、死因究明等推進法案は、実施体制の充実、人材の育成等を死因究明の推進に関して重点的に検討され、実施されるべき施策として規定するとともに、これに即して必要な法制上、財政上の措置を内容とする死因究明等推進計画を政府において定めるということとしております。

また、死因・身元調査法案は、警察等が取り扱う死体のうち犯罪によらないで死亡したと認められるものについて、死体を傷つけて行う検査、解剖等の根拠規定を設けてございまして、従来、死因究明が十分に行われていなかった死体について、今後は充実した死因究明が行われることが期待されるところでございます。

このように、二法案は、問題となっている死体についての死因の究明を進め、日本の死因統計を世界に信頼されるものとすることに大きく寄与するというふうに考えられるというふうに思います。

糸数慶子君

ありがとうございました。

次に、警察の権限拡大への懸念ということでお伺いしたいと思います。

これは、死因・身元調査法案は、警察に死体の調査、検査に加え、遺族の承諾なしに解剖する権限を与えるものでありますが、犯罪死の見逃しを防ぐためには、まず捜査のやり方の見直しや、それから思い込みや偏見を排する意識改革を行う必要があるのではないかと考えます。衆議院内閣委員会でも、解剖する以前に行うべき捜査が行われていれば犯罪死を見抜けた事件があったと指摘されています。

そして、死因・身元調査法案で与えられるような警察の権限については、推進法に基づく死因究明等推進計画を策定する過程で、死因究明制度全体の中で再検討するべきではないかというふうに思うわけですが、法案提出者と松原国家公安委員会委員長にお伺いをしたいと思います。

衆議院議員(細川律夫君)

この犯罪死の見逃し防止のためには、警察等における各種手続におきまして適切な対処が行われるべきだと、このことは当然であるというふうに考えております。

この死因・身元調査法案は、警察等が取り扱う死体のうち犯罪によらないで死亡したと認められる死体について、現在、死体を傷つけて死因や身元を調査する根拠規定というものが必ずしも十分に整備されていないことから、これらを整備するものでございまして、警察等における適切な対処の確保に資するものだというふうに考えております。

なお、死因究明等推進法案では、死因究明に関する施策について、その在り方を横断的かつ包括的に検討し、及びその実施を推進する必要があると考えておりまして、死因・身元調査法案についても現在の形を前提とせずに議論をされるべきだというふうに考えております。

国務大臣(松原仁君)

警察においては、犯罪死を見逃すことのないよう、体制の整備、装備資機材の充実等に不断の努力を重ねております。一方、過去の犯罪死の見逃しの事例の中には、薬物検査や解剖を実施することによって犯罪死であることを見抜けた可能性があったものもあるものと認識をいたしております。

このようなことを踏まえ、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律案では犯罪捜査の手続が行われていない死体に対する検査や新たな解剖制度等が規定されているものと承知しており、本法案は犯罪死の見逃し防止のために有効なものであると認識をいたしております。本法案が成立すれば、これを効果的に活用していくことはもちろんのこと、死体を取り扱う際には犯罪性の有無を慎重に見極め、犯罪死の見逃しを適切に防止していくよう警察庁を督励してまいる所存であります。

糸数慶子君

以上で終わります。