国政報告

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水際対策は必要最小限に

第180回国会 2012年4月12日 参議院内閣委員会(新型インフルエンザ法の参考人質疑 20分)

4月12日(木)、内閣委員会で新型インフルエンザ法の「参考人質疑」が行われました。
参考人は田代眞人(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長)、尾身茂(名誉世界保健機WHO関西太平洋地域事務局長・前自治医科大学地域医療学センター教授)、久保田政一(経団連専務理事)、川本哲郎(同志社大学法学部教授)の4氏。
厚労省の「新型インフルエンザ対策ガイドライン見直しの意見書」に関連して、①水際対策②パンデミックワクチン③仕事を休めない保護者のへの対応について、また「学校閉鎖」の問題などについて質問しました。

糸数慶子君

無所属の糸数慶子です。よろしくお願いいたします。

今日は、お忙しい中、四人の参考人の貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

本年一月三十一日に厚生労働省の新型インフルエンザ専門家会議におきまして、新型インフルエンザ対策ガイドラインの見直しに係る意見書が取りまとめられたわけですが、これは平成二十一年に発生いたしました新型インフルエンザから得られた知見、それからその教訓を踏まえてガイドラインの見直しについて意見を取りまとめたものというふうに承知しておりますが、その点につきまして、まず田代参考人に対して御質問させていただきます。

水際対策についてでございますが、水際対策は効果が薄いといった意見もあるわけで、飛行機やあるいは宿泊施設における停留は国民の活動を大きく制限するものであり、必要最小限のものでなければならないわけですが、ガイドラインの見直しに係る意見書にも、この水際対策について、合理性がなくなった場合、その停留措置を縮小することが記載されています。

水際対策は、国内発生をできるだけ遅らせるための効果があるにしても、国民を何日間も引き止めておくということは多大な人権制限につながるおそれがあるわけですが、その停留の措置は、実施するものであれば、科学的知見に基づいて必要最小限の範囲で行わなければならないと考えますが、田代参考人の御意見をお伺いいたします。

もう一点ございますが、この新型インフルエンザが蔓延すると学校あるいは保育所などが臨時休業となる場合が想定されるわけですが、その場合、保護者が仕事を休むことができればよいわけですが、どうしても仕事を休めない保護者も存在すると考えられます。その場合においての対応、今般のガイドラインの見直しでどのようになったのか、まずお伺いいたします。

参考人(田代眞人君)

おっしゃられたように、まず水際作戦で空港における停留、検疫、これについては必要最低限、効果が認められると判断された場合に限る必要があると思います。前回の場合の教訓もそうですし、我々も事前からそういうことは判断していましたけれども、これで完全に国内に入ってくることを防ぐということは期待できないと。

前回のフォローアップの成績を見ましても、最初に成田でカナダから帰ってこられた学生さんたちが停留されましたけれども、そこからはそのウイルスは国内にはもう広がっていないということが確認されています。ですから、効果そのものはあったと。ほかの人に接触することを遮断したことで、尾身参考人が言われたような効果はあったと。ただし、その後国内には、どこから入ってきたか分かりませんけれども、いろんな空港から、海外から、もう何回も繰り返し別のウイルスが入ってきているわけです。ですから、これを完全に、この水際作戦で国内に入ってくるウイルスをゼロにすることはできません、期待できません。

ただし、先ほど言いましたように、少しでも国内での流行の広がりを後ろに持ってくる、時間稼ぎをする、それからいっときに医療の対応の能力を超えて大きな患者、重症の患者が大量、多数出るという、そういう事態を回避するためには、ある程度は必要だと思います。どこでその有効性を判断して、もはやこれをやってもしようがないかという、その方針の切替えをするかということについては具体的なことはまだ検討されていませんけれども、そういうことを考慮してフレキシブルに方針を変更していくという、そういうことはきちっと合意されております。

それからもう一つ、休校の問題ですけれども、これも検討委員会で随分ディスカッションをされました。確かに、感受性者が大勢集まる学校とか幼稚園、保育所、そこでウイルス、新型ウイルスは増幅していくことは間違いありません。そこで、子供たちがそれを家庭に持って帰って、そこから社会に広がっていくと。それは、ある程度はそういうプロセスで行くと思います。そこを完全に学校を休校にしてそういうリスクを減らすということ自身は効果があるという、そういう報告もあるわけですけれども、それによって、今おっしゃられたように、保護者が仕事を休んで子供の世話をしなければならないという、そういう事態が生じてきます。そこをどういうふうにするか。

ただ、これは休業補償をするというだけでは問題が解決しません。仕事を休むことによって、その方たちが社会で果たしている機能というのが低下するわけです。例えば看護師さんについて見れば、ほとんどの方が女性です。お子さんを持っておられる方が多い。その方たちは、じゃ、学校を休みにして、子供の面倒を見なきゃいけないから第一線の医療の仕事を休みますと、そういうことが果たして可能かどうかですね。ですから、これも非常に大きな問題で、どこでその判断をするか。

先ほど大学の休みの話が川本先生からありましたけれども、海外では学校を閉鎖した場合に教育のバックアップをどうするかと。そのテレビのプログラムを既に作成しているとか、様々なそういう対策が取られております。そういうことも一つは学校を休校にした場合の対応として考えておく必要があるかと思います。

以上です。

糸数慶子君

時間の関係もございますので、参考人に続けてお伺いしたいと思います。

尾身参考人にお伺いいたしますが、平成二十一年の新型インフルエンザでは日本の死亡率は諸外国に比べて低かったわけです。先ほどもお話ございましたが、尾身参考人御自身の論文の中でも学校閉鎖を挙げています。確かに、学校閉鎖は死亡率を抑えること、大きく貢献しておりますが、一方で、過剰であったという批判もあるわけですが、国民の権利を制限するその対策、必要最小限とすべきだと思いますが、それについて御所見をお伺いいたします。

次に、久保田参考人に続けてお伺いしたいと思います。

新型インフルエンザが国内に蔓延すると、各企業の従業員、最大40%が欠勤することが想定されるわけですが、その状況になった場合、最低限の社会経済機能の維持を図らなければならないわけですけれども、経団連としてどのような準備をされているかということと、それから、平時からその体制の確立、それから訓練が本当に必要だと考えますが、各企業において現状はどうなっているのか、経団連はどのような準備をしているか、お伺いします。

最後に、川本参考人に対してですが、やはり新型インフルエンザ対策と、それに伴う人権制限及びその経済的損失について川本参考人の御所見をお伺いするのと同時に、本法案に対する評価と、あるいは改めて政府に要望すること、本法案の施行に際しての要望を改めてお伺いをしたいと思います。

委員長(芝博一君)

まず、尾身参考人、お願いいたします。

参考人(尾身茂君)

危機管理において最も重要なことの一つは初期対応なんですね。初期対応が比較的適切に行われますと、いずれ感染の流行の山は来ますけれども、先ほど田代参考人から話がありましたが、時間が稼げる、この間にいろんな対応が打てるという意味で、先ほど私が申し上げている公衆衛生対策、例えば学校閉鎖等が最小限、もちろん先生たちがおっしゃるように、これはもちろん最小限のレベルでやるということで、ただ、一つ先ほどからお話が出ている教育の問題、機会の問題ですけれども、比較的、私は、小学校、中学校の学校閉鎖は大学生あるいは職業人の休業よりもやややりやすいというか、社会にとってやや理解を得やすいというのは、実は夏休みがありますね。もちろん感染が夏休みにぶつかっては、まあいずれどこかで休むのであれば、その間休んで、夏休みに補習をするということも現実的な対応ではないかと思います。

先ほど田代委員の方から、インフルエンザにおいては小学校、中学校がいかに大事かということは、そこの人たちは、動きの多い人たちがほぼ八時間以上同じスペースでいて、その人たちが感染すればほぼ確実に、家に帰って妊婦のお母さん、体の弱いおじいさん、おばあさんに感染する率が高くて、したがって死亡率が高くなるということであるので、人権を守りつつ最低限のことをやる。ここは言ってみれば、公衆衛生学的な感染症対策のアプローチと、それから人権の問題という微妙なバランスが問題で、その都度適切な判断をする必要があると思います。

委員長(芝博一君)

続いて、久保田参考人。

参考人(久保田政一君)

ありがとうございます。

先生御指摘のとおり、実際、例の豚インフルエンザのときでも、保育所、学校閉鎖に伴って、パートの方中心に従業員の確保だとか、それから欠勤者の多い店舗等によって応援人員の確保とか、実際そういう問題が起きまして、それで今回、四〇%の欠勤率前提にということになると、これなかなか非常に厳しい問題がありまして、そういった前提の中で、最小限、供給を途絶えさせないためにはどういうセクションにどれだけの人数が要るのかとか、そういうところの計算からやっておりまして、そして、そのための具体策を政府関係者といろいろ詰めているところでございます。

その中の一つ出てきている議論は、そういう必要最小限の人員に対してプレパンデミックワクチンの事前接種をどうするかという問題、これは課題として大きく取り上げられておりまして、これはまた企業それから業種によってもいろいろな考え方はございます。まずやはりその安全性の確保とかそういった問題がありますので、この辺については国が指導する形で治験の対象や数を拡大して、安全性が確認できたら国としてそういった指示を出すとかというふうなことも必要かなというふうに考えておりまして、いずれにしましてもこれからの課題が大きいというふうに考えているところでございます。

参考人(川本哲郎君)

第一の方は、私は、要は行政、国、地方自治体の説明責任がまず一つ大事だろうと思っています。必要最小限というのに反対する人はおられないんですけれども、実際に必要最小限を国が出したときに国民がどう受け止めるかですね。つまり、必要最小限じゃないのじゃないかという疑問が起きるときが問題なわけですから、そこは丁寧なやっぱり説明をふだんから心掛けていただくということだろうと思います。

それと、保護者の休業の問題は、これは危機管理の問題で、実際に職場の中で四割の人が休んだらどうなるかというようなことは通常では考えられないことですけれども、それが想定外というふうにいくとこれはまずいわけで、企業の方あるいは国、地方自治体の方でもやはりそのことは危機管理の問題として考えていただきたいというふうに思っております。

第二の御質問ですが、法案の評価。先ほどちょっと申し上げたとおり、私、これ前向きにとらえていただくのは大賛成です。ですから、こういう法案は作っていただきたいと思うんですけれども、ただ細部の詰めですね。ともかく作ればいいというものではないわけですから、そこをしっかりやっていただきたいというのが私の要望でございます。

以上です。

糸数慶子君

ありがとうございました。